開成校長「好奇心のスイッチ探しが親の役目」 「ハーバード大ベストティーチャー流」子育て
例えば本書の第13章のコラム「『むやみにほめない』ことの効用」も、日米の違いを踏まえて読むべきです。というのも日本とアメリカでは「ほめる」ことの扱いがまったく違うからです。
日本の場合、親も先生も叱ってばかりで、ほめることはめったにありません。ところがアメリカの場合、「ほめること以外はしない」といっていいくらい、ほめてばかりなのです。とりわけ勉強のできる子は、ほめられることに慣れきっています。
だからこそ「あえてほめすぎない」ことが新しい提案になるので、日本とは少し事情が違います。
日本の場合、子どもたちはほめてもらう機会が少ないので、1つのほめ言葉がとてもよく効きます。ちょっと「あそこがよかったよ」とほめてあげるだけで、グッと伸びていくことも珍しくありません。ポイントは具体的にほめることと、本人が努力した成果を見逃さないことです。
例えばサッカーの練習で、それまでリフティングが1桁しかできていなかったのに、30回できるようになったら、「頑張ったな」と声をかけてあげる。そうすると本人は「練習したかいがあった」とうれしくなって、一段と練習に励むわけです。「垂直比較」といっていますが、少し前の本人と比べて上達を指摘するようにします。
いかに子どもの知的好奇心に火をつけるか
本書の第8章では、高校生になった子どもたちのSAT(大学進学適性試験)の模試の成績がよくないというので、お母さんがSATの問題を手に入れ、それをタイプ別に分けて分析し、子どもに試験対策をさせた――という例が紹介されています。
こんなことができる親は、現実にはほとんどいないでしょう。親がなんとか子どもの勉強についていけるのは、普通はせいぜい中学入試まで。それ以降の勉強は、子どもが自主的にやらねばなりません。
だからこそ小学校に入るまでに、子どもが自ら学ぼうとする意欲を身に付けさせておくことが大切になります。そのための早道は子どもが「面白い!」と感じるものに出会わせること。親がなすべきは自分がやらせたいもの、例えば「英語をやれ」と命じてやらせることではなく、子どもにとっての好奇心のスイッチを探し出すことです。
何が好きで集中できるのか、その対象は人によって、また成長の段階によって違います。なので、できるだけいろいろなことを紹介してやり、何か1つに子どもが食いついてきたら、それを存分にやらせるのです。面白ければ集中でき、そうすれば人より上手になれます。それによって「これについては人には負けない」という自信が生まれます。
本書でも第9章で同じことが書かれています。レゴに夢中になる子、バイオリンに夢中になる子、トカゲに夢中になる子など、いろいろ例があげられています。
私の息子の1人は、電車が好きでした。私は彼を丸ノ内線に連れていき、終点の方南町まで一緒に乗って、また戻ってきたことがあります。
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