開成校長「好奇心のスイッチ探しが親の役目」 「ハーバード大ベストティーチャー流」子育て

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本書で取り上げられているのはハーバード大学に進学し、社会的にも成功した人たちのケースです。どの事例でも彼ら彼女らは一様に、小学校に入った時点で自分を強く信頼する気持ちを抱いていたことが伝わってきます。

個人的にもう1つ面白かったのが、第7章の「優等生のきょうだいはどう育つのか」でした。

この章のエピソードの1つは著者の1人であるロナルド・F・ファーガソンとそのきょうだいの物語で、5人兄弟の長男のロナルド(ロニー)は優等生、ほかの4人のうち1人は医師、1人は学生空手チャンピオンから実業家になりましたが、あとの2人は薬物中毒とアルコール依存症に苦しみ、うち1人は若くして亡くなっています。

同じ親から遺伝子を受け継ぎ、同じ家庭で育ったのに、なぜこんなに大きな違いが出てしまうのか。その疑問がファーガソンをこの研究に向かわせたのでしょう。

実際、きょうだいでもこのような違いが出ることは珍しくありません。それは親が自分では平等に育てているつもりであっても、子どもにとっては実はそうではないからです。本書ではこの問題を正面から取り上げています。

ひとつ苦言を呈させてもらうと、本書であげられている「整備士」「手配役」といった親が果たすべき8つの役割は教育用語ではなく、取り上げられている事例を読んでも、具体的にどんな機能について述べているのかが明確ではありません。

もっとイメージが湧く用語が使われれば「こうすれば子育てはうまくいく」という具体例、方法論として力強いメッセージ性が伝わってきたと思います。

日米の教育文化の違いを理解する

私はアメリカで子育てを経験しましたが、子育ての文化は日米で大きく異なります。

端的なのが「学校に行く」ことについての意識で、日本では「義務」であり、子どもが学校に行かないと、子どもも親も後ろめたさを感じます。

しかしアメリカでは学校教育を受けることは、「権利」です。同じ学年を繰り返すことに対しても、日本人は「落第」という言葉でネガティブに捉えがちですが、アメリカでは「子どもには理解できるまで教えてもらえる権利がある」と考えているので、子どもが理解不足のまま進級させられそうになると、「うちの子はまだわかっていないのに、なぜ進級させるんだ」と親が抗議します。

そうした「常識」に類することは、アメリカ発の育児書にはいちいち書かれてはいません。しかしその部分の知識がないと、書かれている内容を正しく理解できないこともあります。

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