「ジョーカー」大ヒットまでの苦難多き道のり 当初、映画会社からは「狂ったアイデア」扱い

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これが大人向けのシネマであるもう1つの証明に、マーティン・スコセッシからお墨付きをもらえているという事実がある。スコセッシがマーベル映画を「シネマではない」と言ったことは、最近、ニュースで報道されたばかりだ。

だが、同じくアメコミが元ネタではあっても、今作に関して彼は、以前から知り合いであるフィリップスから初期段階の脚本を見せてもらった途端に、好意を示している。

自身の監督作『アイリッシュマン』の製作で忙しかったため、エグゼクティブ・プロデューサーを務めることはかなわなかったものの、スコセッシは、自分の作品をずっと手がけてきた優秀なプロデューサーや、ニューヨークの優秀なクルーをフィリップスに紹介した。今作の裏側は、そんな人々に支えられているのである。

ヴェネチア映画祭で「最高賞」を獲得

マーケティングにも、十分な配慮がなされた。ヴェネツィア映画祭、トロント映画祭で立て続けにお披露目というのは、アカデミー賞を狙ううえでの王道手段だ。フィリップスがプロデューサーを務めた昨年の『アリー/スター誕生』も、同様の手法で、見事、アカデミー賞候補入りを果たしている。フィリップスらが今作を映画祭に出品すると決めた最大の理由は、関係者内での評価が非常によかったこと。

「それに、これが普通のスーパーヒーロー映画ではないということをどうしたら人にわかってもらえるかというのもあった」と、彼は述べる。

有名映画祭で上映されるというだけで、ある程度、良質映画のレッテルを貼ってもらえる。しかも、ヴェネツィアでは、最高賞に当たる金獅子賞を取ることにもなった。これがさらに映画通の興味を引くことになったのである。

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