鉄道運賃、値上げで黒字化できない法律のワナ

「料金」を稼げるよう付加価値を高めるべきだ

しかし、「運賃」ではなく、特急料金などの「料金」になると扱いが変わる。

料金についても運賃同様に鉄道事業法で定めがある。法第16条第1項において、「国土交通省令で定める料金」は法第16条第1項により運賃と同様上限の認可を受けなければならないとされている。他方で、法第16条第4項では、「特別車両料金その他の客車の特別な設備の利用についての料金」は認可不要で届け出で足りるとされている。この点をさらに説明する。

法第16条を受けた規則第32条は、まず第1項で、運賃と同様に認可の対象となる料金を「特別急行料金、急行料金その他の運送の速達性を役務の基本とする料金であって、新幹線鉄道に係るものとする」と定義づけている。

続いて、規則第34条第1項第2号は、法第16条4項にいう特別料金等に含まれるものとして「特別急行料金等であって(規則)第32条第1項に定めるもの以外のもの」と定めている。

すなわち、認可を要するのは新幹線特急料金であって、それ以外の特急料金や急行料金は届け出をしさえすればよいということである。特急料金だけでなく特別車両料金や特別な設備の対価である料金や指定席料金も認可の対象ではなく届け出をすれば足りる(法第16条4項、規則第34条第1項各号)。もともとこの料金も一部(特急料金など)は認可の対象であったが、鉄道事業法改正の際の規制緩和で届出制の対象が広げられた。

運賃と料金の違い

運賃は地域公共交通の基本的な輸送の対価である一方、料金は速達列車や特別車両を利用する場合のプラスアルファの対価である。

料金の対象となるサービスは公共交通機関としての移動サービスではなく速達性、快適性といったサービスであるので、その対価を認可の対象とする必要はない。

ただ、新幹線の特急料金について運賃と同様に認可の対象としているのは、新幹線鉄道を走る列車は特急列車しかなく、新幹線を利用するには運賃+特急料金が必ず必要になるため、特急料金といえども運賃と同視できるからである。

料金に関する興味深い例としていすみ鉄道(千葉県)の「急行料金(300円)」がある。通常、利用者が急行料金を支払ってでも急行に乗るのは、急行列車の速達性ゆえである。しかし、いすみ鉄道の時刻表を見ると明らかなとおり、この「急行」は通過駅こそあるものの普通列車と比べて速くもなく、通常の急行列車のような速達性はない。
  
それでも人が「急行」に乗るのは、速達性ゆえにではなく、その車両が国鉄時代の気動車だからであり、懐かしい急行券を手に往年の気動車急行の雰囲気を味わえるからである。つまり「急行」という名称を用いて料金を徴収することで、「移動をする」対価の運賃とは異なる「懐かしさ」「珍しさ」という付加価値に対する収入を得ているということである。

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