鉄道運賃、値上げで黒字化できない法律のワナ 「料金」を稼げるよう付加価値を高めるべきだ

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「適正利潤」に関して、中小民鉄に適用される「収入原価算定要領」には「配当所要額」(適正利潤)という項目があり、「払込資本金に対し10%配当に必要な額の鉄軌道事業分担額」とされている。

民間事業者という立場からすれば、運賃額を決定する際に利益をどの程度見込むかは本来自由に決められるはずである。

その自由な決定を規制するということからすると、鉄道事業法がいう「適正な利潤」とは、「鉄道事業者が自身で適正と考える利潤」や「目標とする利潤」ではなく、「利用者のために必要以上に儲けさせない」という目的からはじき出される「適正利潤」であり、公共的側面から見た「適正な利潤」の確保にとどめるということである。

運賃変更求める行政訴訟も

しかも、上限運賃の認可やその範囲での運賃届け出をしたときには、運輸審議会への諮問や、重大な利害関係を有する利用者の意見が聴取されることもありうる(法第64条の2、第65条、鉄道事業法施行規則(以下「規則」)第73条第3号)。

過去には、北総鉄道について現鉄道事業法下で認可された運賃の変更を求める行政訴訟が利用者から起こされたこともあった(東京地裁平成25年3月26日判決『判例時報2209号』79頁・変更は認めず)。

1999(平成11)年に鉄道事業法が改正された際、「鉄道事業者間の競争の促進による利便性の向上の要請に対して鉄道事業への参入を容易にする」などの理由によりそれまでの規制は緩和された。

運賃についても鉄道事業者はより機動的に定められるようになったが、それでも「認可された上限運賃の範囲内」という限定は付く。規制が緩和されたとはいっても、鉄道事業が地域の独占的な交通機関であり、重要な公共交通機関であるからこその経営の自由に対する規制が残されている。

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