カシオの関数電卓、地味に2000万台売れる理由 Gショックだけじゃない、陰の大黒柱の正体

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計算機という「ハード」を売るだけではなく、Webアプリなどのソフトの提供も始まっている。「CASIO EDU+」というアプリでは、関数電卓上に表示されたQRコードを読み取り、答えに至るまでの数式やグラフを表示できる。生徒同士でデータの共有も可能で、グループワークやディスカッションにも対応できる。

また、北米ではネット上で行われる数学試験や電子教科書での採点ツールや学習ツールを提供している。

日本の教育現場で関数電卓はなじみが薄い

海外で拡大が続く関数電卓だが、意外な盲点となっているのが国内販売だ。カシオは30年以上前から欧米で関数電卓を販売してきたが、日本の教育現場では手計算が重視されるため、入試はおろか学校の授業でも関数電卓の使用は基本的に認められてこなかった。そのため、大学の理系学部や経済学部で学ぶ人たち以外では関数電卓はそもそもなじみが薄い。

2020年に行われる大学入試改革の議論の中で、関数電卓の使用を検討の俎上に載せることが断念されたという。「現場の高校の先生たちが関数電卓による教授法を知らないうえ、手計算を頑張ってきた自らの成功体験が捨てきれない」(文科省初等中等教育局の職員)など議論の俎上にすら載らない状況だ。

そのため、教育事業の国内販売の主軸は電子辞書で、関数電卓は大学などの推薦教材扱いだ。電子辞書の売り上げの大半は年度末と季節の偏りがあるうえ、利益率は関数電卓と比べても低い。

「いつかは日本でも関数電卓を広く展開したい」(太田氏)。理系学部出身者を中心に関数電卓の使用者や経験者は着実に増えている。認知度が高まれば、いずれ日本でも関数電卓への理解が深まり、普及するかもしれない。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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