「J-REITは上がる」と信じる人がハマる落とし穴 「リスクが低い」と思っているなら大間違いだ

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筆者は、ファンダメンタル分析と行動ファイナンスの視点から、ここからの東証REIT(Jリート)指数の上値余地は小さく、それほど遠くない時期に、急落する場面に遭遇する可能性もあるのではと考えています。Jリートの保有する全不動産に占めるオフィスの割合は概ね4割となっています。

オフィスでは東京など都市部の不動産が多く、投資家の間ではJリートの大きなトレンドを見る上で、東京都心5区のオフィスの空室率と賃料の動向に注目することが多いと言われます。ちなみに足元の東京都心5区の空室率は1.7%台と歴史的な低水準にあり、平均賃料は5年以上連続で上昇し、ファンダメンタルズ面は良好となっています。

ファンダメンタルズの悪化リスクで急落の可能性も?

一方、足元の日本の企業業績については、グローバル景気の減速や円高が直撃し、悪化傾向にあります。また、日経平均株価の不透明さは投資家心理だけでなく、企業経営者のマインドをも委縮させている可能性もあります。つまり、足元で発表されている「良好な統計」と「既存テナントおよび潜在テナントである企業の業績・ファンダメンタルズの悪化」とのギャップが生じ始めており、今後、空室率は企業業績の悪化に数カ月~半年遅れで緩やかに、また場合によっては、急速に反転してくる可能性があります。そうしたJリートの先行きのファンダメンタルズの悪化を事前に察知し、または悪化が顕在化した場合には投資家の売り圧力が強まる恐れもあるでしょう。

また、世界経済の減速懸念を背景にグローバルで金利低下が行き過ぎ、逆に金利の反転リスクも高まってきています。今は、投資家の間で少しでも高い利回りを確保しようと世界的に債券投資の流れが加速しており、マイナス金利の国債が15~16兆ドル規模に積みあがるなど足元は「債券バブル」の様相を呈してきています。もし、逆に長期金利が反転する動きとなれば、高利回り商品として見られているリートは相対的に魅力度が低下します。それとともに、先行きの借り入れ金利上昇による業績悪化懸念などから、売り圧力が高まる恐れには注意が必要でしょう。

さらに金融と投資に対する心理をつなぎ合わせた「行動ファイナンス」の視点を踏まえると、投資家はJリートの値動きの特性を勘違いし(バイアスを持ち)、また分散投資に安心しきって過剰にリスクをとりすぎている可能性にも注意を向ける必要があります。

読者の皆さんの中には、株式や債券など商品ごとのリスク・リターン分類表を見たことがある人もいるかもしれません。例えば、収益率と標準偏差から「ローリスク・ローリターン」「ミドルリスク・ミドルリターン」「ハイリスク・ハイリターン」として各投資対象商品を分けている、と言う話は、なんとなく言われれば思い出す人もいるでしょう。概ね、債券などは「ローリスク・ローリターン」、株式などは「ハイリスク・ハイリターン」に分類されていますが、投資家は、Jリートを「ミドルリスク・ミドルリターン」の商品特性であると勘違いし、「さほどリスクはない割においしい商品」という認識の元に、過剰にリスクをとりすぎてしまう傾向があります。

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