自動車暴走で見落とされる「有効視野」の大問題 認知機能だけでなく、視野にも注目すべきだ

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では、有効視野を意識して安全に運転するにはどうすればいいかというと、第1には運転の中で有効視野を狭めるようなことをしないことです。例えば会話をしているときに、「頭で絵を想像する」と視覚に割く脳の容量が減ります。ですから運転者と話す同乗者の人は、「昔一緒に行った場所を思い出させる」「家族の顔を思い浮かべさせる」など、画像を想起させるような会話を避けるべきです。

目の病気がないかをチェックすることも、必要になります。高齢者となったら、早めに1度は眼科でチェックをしましょう。

そして何より、有効視野は簡単なトレーニングで広げることができるので、普段から手を打つことが可能なのです。

有効視野を広げるトレーニング方法

有効視野の訓練法にはいろいろありますが、私が最もお勧めするのは視力回復もできるガボールパッチを使った「ガボール・アイ」という方法です。

ガボールパッチとは白黒の縞模様、白黒の背景で構成された画像のこと。ちなみにガボールパッチは、縞模様も背景も白黒で、背景は柄や模様や写真にはなっておらず単調なものだけが、視力回復に効果があると科学的に証明されています。

世の中にはそうなっていないものも出回っていますが、そういったものは科学的に証明されていないので、効果のほどは保証できません。

「ガボール・アイ」によって、脳の視覚野が活性化することがわかっています。では、「ガボール・アイ」で有効視野を広げるトレーニングの方法をご説明しましょう。

まずは、下にあるガボールパッチで構成された画像が、視野の20度以上の範囲まで目に入るように、距離をとります。例えば30㎝離れた距離で見るのならば、直径10㎝の円型の範囲より外まで視野に入ればいいわけです。

この状態で中心部を見たまま顔も目も動かしません。目を動かさずにどこまで縞模様がはっきりと区別できるかということを繰り返して訓練するのです。最初のうちは、はっきりと区別できる範囲が狭いですが、徐々に広がっていきます。

しばらく続けてみてください。これが16度程度、つまり8㎝の直径の範囲より外で縞模様が区別できない場合は、運転の危険域にあると思ってください。

「ガボール・アイ」は視力改善にも有効であり、近視・遠視ともに8割の人が0.2程度回復することもわかっています。「有効視野」とともに視力も改善することで、よりクッキリと見えるようになり、運転がさらに安全にできるようになるでしょう。

加齢による免許返納が難しい場合は、今回ご紹介しました「ガボール・アイ」をはじめ、せめて自分でできる方法で運転に役立つ方法を模索したいものです。

平松 類 眼科医/医学博士

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ひらまつ るい / Rui Hiramatsu

愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。現在、昭和大学兼任講師、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長、三友堂病院非常勤医師・眼科専門医・緑内障手術機器トラベクトーム指導医として勤務している。延べ10万人以上の老人と接してきており、老人患者が多い病院の眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事し、シニア世代の新しい生き方を提唱する新老人の会の会員でもある。専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。

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