中流家庭「普通の人」が生きづらさを増す根因 少数の超富裕層を生み出す資本主義の仕組み

拡大
縮小

このように伝えなければならない現実があるのだとすれば、それは資本主義が、私たちの社会が、とても居心地の悪いものになりつつあるということにほかならない。

エーブラハム・リンカーンが言ったように、かつてのアメリカは普通の人間を愛していたが、今では中流階級の普通の人間を愛せなくなってしまったようだとギャロウェイはいう。代わりに特別な人を新たな英雄として祭り上げ、他の人々は取るに足らないと思うようになってしまっているということだ。

だが現実問題として、大半の人々は特別な人間ではないはずだ。にもかかわらず私たちは、勝者がすべてを独占する経済をつくり出しているようだというのである。

それは、私たちが望んでいることでしょうか。大勢のミリオネアがいる社会と、一人のトリリオネアがいてその他の人々は貧しい社会の、どちらが良いのでしょう。
本来は、中小企業を優遇して大企業になるチャンスを与えるべきです。ところが、アメリカでは別のことが起こっています。宝くじに当たった人に、「おめでとう。賞金額を倍額にしましょう」というようなことが起こっている状況なのです。アメリカは、3.5億人の召使が300万人の主人に仕える社会に向かって突進しているかのようです。(40~41ページより)

資本主義の現在と未来をつかみとったこと

もちろん規模は違うが、同じことは現在の日本にもいえるのではないだろうか?

『欲望の資本主義3:偽りの個人主義を越えて』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

今回はスコット・ギャロウェイの発言に焦点を当てたが、ほかの4人、すなわち仮想通貨の開発者であるチャールズ・ホスキンソン、現在の資本主義を冷静に分析する経済学者のジャン・ティロール、文明論的な視点から歴史を読み解く歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ、そして若き哲学者のマルクス・ガブリエルの主張も同じように説得力がある。

立場は違えど、それぞれの視点から資本主義の現在そして未来をつかみとっているわけだ。そのすべてに共感できるか否かは別としても、要所要所で納得できるのは、きっとそのせいなのだろう。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
Netflixが日本での「アニメ製作」を減らす事情
Netflixが日本での「アニメ製作」を減らす事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT