1つの企業が巨大になり影響力を持ちすぎると、不正が起こるものだとギャロウェイは指摘している。もちろん、税金逃れもその1つだ。アメリカではこの10年間でウォルマートが640億ドルの法人税を納めたのに、アマゾンが納めたのは14億ドル。
このように企業が強くなりすぎると、税制の逆進性に行き着いてしまうということだ。
だが、人々はなぜそれほどに、お金に心を奪われてしまうのだろう? お金がすべてという経済の状況は、今後も続いていくのだろうか?
自分の子どもはスティーブ・ジョブズにはならない
ところでギャロウェイは、「GAFAの出現によって、アメリカ社会はどう変貌したのか?」という問いに対して、「アメリカは少々道を見失ったのだと思います」と答えている。
かつてのアメリカの目標は、大勢のミリオネアを生み出すことだった。よき市民として一生懸命働き、ルールを守りさえすれば、一生で100万ドル(日本円で1億円強)は貯蓄でき、経済的安定を手に入れられるはずだったのである。
しかし現在、状況は変わっている。巨大IT企業の出現と、それを後押しする経済政策のため、アメリカの目標は大勢のミリオネアを生み出すことから、少数のトリリオネア(1兆ドルの資産を保有する人)を生み出すことに変わってしまったのだ。
そのような状況下においては、1人の勝者が夢のような生活をする一方、その他の人々は無残に死んでいくことにもなる。このことについてギャロウェイは、「誰もが自分の息子が次のジョブズだと妄信する奇妙な“宝くじ経済”に陥っていると表現しているが、言い得て妙である。
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