2020年大統領選で民主党候補が苦境にあるわけ

通商政策をめぐる2極化にどう対処するのか

ところが、自由貿易に対する国民の支持は上昇しているのである。NBCニュースとウォールストリートジャーナル紙の世論調査(2019年8月実施)によると、自由貿易への支持は64%であるのに対し反対は27%だ。オバマ政権末期の支持51%、反対41%と比べても、自由貿易への支持は高まっている。現在は自由貿易を支持するという回答は民主党支持者で73%、共和党支持者では52%だ。

世論調査結果では民主党支持者の自由貿易に対する支持が高いのに対し、民主党大統領候補はいずれも自由貿易に消極的だ。このミスマッチについては3つの理由が考えられる。

第1に、世論調査では「ネガティブ党派心」が前面に出てくることが考えられる。

アメリカ社会の2極化が進む中で、民主党支持者の間ではトランプ大統領の推進する政策全般に反発する「ネガティブ党派心」の傾向が見られる。したがって、通商政策についても、トランプ大統領が保護貿易政策を推進していることから、その逆の自由貿易政策を支持する民主党支持者が多いことが考えられる。

選挙には保護貿易派の影響力が大きい

第2に、予備選では保護貿易派の影響力が強いことだ。

民主党支持者の多くは都市部に集積していることから、雇用機会の拡大、そしてより低価格そしてバラエティに富んだ商品の購入など自由貿易の恩恵を享受してきた。だが、一方で民主党の伝統的支持基盤である労働組合や環境団体は保護貿易政策を推進しており、その組織力からも民主党への影響は大きい。また、民主党予備選に足を運ぶ民主党支持者には労働問題や環境問題に対する意識が高い国民が多いことからも、民主党大統領候補は自由貿易推進を主張することで得るものよりも失うものの方が多い。

第3に、大統領候補のラストベルト地域重視だ。

民主党候補が2020年大統領選で勝利する最も簡単な手法はブルーウォールと呼ばれていた伝統的に民主党が強いラストベルト地域の奪還だ。それはヒラリー・クリントン候補が2016年に勝利した州に加え、僅差で負けたラストベルト地域3州(ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン)を取り戻すことだ。

ラストベルト地域では経済は低成長に陥っているものの、引き続きトランプ大統領に対する高い支持がみられる。その背景にはトランプ大統領の保護貿易政策を評価し将来の経済効果に期待している有権者がいることが想定される。したがって民主党大統領候補は、国全体では自由貿易への支持が高まっており、その推進が国益にかなうと理解していても、ラストベルト地域奪還のためには保護貿易政策を推進せざるをえない。

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