2020年大統領選で民主党候補が苦境にあるわけ

通商政策をめぐる2極化にどう対処するのか

現在、民主党大統領候補は2つのグループに分かれているとみるのが一般的だ。

1つは、トランプ大統領が登場したことを、欠陥のあるアメリカ政治システムの症状であると捉え、システムそのものを破壊する必要性を訴える革新派。もう1つがアメリカ社会の問題の根源は、基本的にトランプ大統領自身であって、トランプ政権前のアメリカ政治に戻そうとする復元派だ。現在、民主党予備選で先頭集団にいる3人の候補を分類すると、エリザベス・ウォーレン上院議員とバーニー・サンダース上院議員は革新派、バイデン前大統領は復元派に含まれる。

革新派のウォーレン、サンダース両議員はトランプ大統領以上に保護主義的な貿易政策を主張している。いずれも、歴代政権の自由貿易交渉を産業界が背後で操り、労働者など一般市民を考慮しない協定に合意してきたと批判する。

ウォーレン上院議員はすでに自らの通商政策を具体的な提案として公表し、アメリカが通商交渉を行う際、相手国が満たさなければならない条件を示している。だが、その条件は現状ではアメリカでさえ満たすことはできないほど厳しい。つまり、条件を緩めないかぎり、ウォーレン政権では新たな貿易交渉はできない。

ウォーレン政権またはサンダース政権ではいずれもトランプ政権以上に強力な保護貿易政策がとられることが想定され、アメリカ産業界は警戒している。ただし、民主党予備選ではウォーレン、サンダースなどが勝利できても、大統領選本戦では勝利に不可欠な無党派層や民主党穏健派の票を失うリスクがあろう。

民主党政権になっても対中強硬姿勢は続く

一方、復元派の政策ではトランプ大統領が新たに導入した追加関税を撤廃する可能性もある。バイデン政権になれば、各国と連携した対中政策を実施することが想定される。「環太平洋経済連携協定(TPP)」は民主党内でもタブーの言葉となってしまったため、他の名称に変わるであろうが、将来的にはオバマ政権時代に署名したTPPと同様の枠組みを再構築することもありうる。

革新派と復元派では保護貿易政策の強硬度合いが異なるものの、中国の国家資本主義を問題視していることは共通している。民主党が政権を奪還した場合、革新派政権ではトランプ政権と同様の関税策も含む対中強硬策を継続し、復元派政権の場合は関税は撤廃し、各国と対中政策で連携しつつも対中強硬策は継続するであろう。

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