「集団的自衛権」はなぜ必要なのか?
これまでの議論を振り返る
安倍首相の「集団的自衛権の行使について研究しなければならない」というコメントを聞くと、日本は今まで集団的自衛権について検討してこなかったように感じますが、これまでも、国会において集団的自衛権に関する議論は行われてきました。
その議論を拾ってみますと、集団的自衛権の行使に該当する可能性が大きい事例としては、以下のようなものがあります。
(1)他国の武力の行使と一体化するような協力支援の活動(H15.7.17 参・外交)
他国が自衛、もしくは、その国の自衛権の行使として武力を行使している場合に、これと一体化するような形で協力支援を行うと、集団的自衛権の行使に当たると評価されることがありうる。
(2)戦闘地域までの武器・弾薬の輸送(H13.10.11 衆・テロ特)
(武器・弾薬の輸送が)戦闘地域までおよぶと、武力の一体化に抵触する可能性が大いにある。
(3)戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対する給油(H11.4.15 衆・防衛指針)
戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び支援については、個々の作戦行動のたびに必要なもののみを給油するという態様で行われるであろう。したがって、個々の戦闘行為との密接な関係があるのではないかということから慎重な検討を必要とする。
(4)我が国の領域外での外国船舶への攻撃の排除(S55.10.14 政府答弁書)
我が国の領域外の海上交通路において、我が国以外の国に対する武力攻撃に対抗するため、自衛隊が当該国と共同して武力行使をすることは、集団的自衛権の行使であり、憲法の認めるところではない。
また、集団的自衛権の行使に該当する可能性があるもの、該当する可能性が小さいものを整理すると以下のような表になります。この表は、おそらく初公開です。あまりきれいにまとまっていませんが、逆に言うと、体系的な整理がないままに今まで議論されてきたことがご理解いただけると思います。
このように「集団的自衛権」については、国会などでの解釈議論の積み重ねがあります。これを無視してゼロから検討を行うことはできません。
また、日本を巡る東アジアの安全保障環境や国際社会秩序は著しく変化しています。ただ、北朝鮮の問題だけに目を向けるのでなく、中国の軍事増強、台湾海峡の問題、ロシアの動向などにも目を向けて議論しなければ、全体最適を達成することができません。
安倍首相にはぜひとも上記の指摘を踏まえた上で、危機に迅速に対応し、また日本の安全保障を実現するために、集団的自衛権に対する研究を行ってもらいたいと考えます。そろそろ国民全体で安全保障のあり方を議論するときにきていると思います。きとんとした正確な情報を公開し、みんなで安全と平和を守る道を模索すべきです。私は、現状の憲法の枠組みの下で、集団的自衛権の行使でなく、集団安全保障体制を構築すべきだと考えています。
藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など。個人ブログ にて毎日情報発信中
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら