現役車両も登場…京都鉄博「攻める展示」の裏側 引き込み線を活用した企画や「車体色変更」も

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「展示車両は収蔵品であって“客寄せパンダ”ではなく、人気取りのために手を加えるべきではない」という意見もある。これに対して主原さんは「こうした企画を通じ、その車両のたどってきた歴史や背後にある時代の変化を知っていただくことで、鉄道への興味を持ってもらいたいと考えました」と語る。

例えば「リゾート&シュプール色」はスキーブームを背景に登場しており、そうした説明も加えることで社会の流行について振り返ったり、鉄道がどういう役割を果たしてきたかについても来場者に伝えたいという。「もちろん、企画終了後は元の姿にきちんと戻せるよう、さまざまな対応をしています」(主原さん)。

この投票は、9月1日から30日まで行われ、Web投票に加えてポイント数が10倍にカウントされる現地投票も実施。その結果をもとに、どちらか1両が10月14日から来年1月31日までラッピングされる。9月12日の中間発表では、クハネ581形が4863ポイント、クハ489形が4473ポイントと大接戦の状態だ。

「正直、ここまで接戦になるとは想像していませんでした。それだけ、それぞれの車両とカラーに思い入れのある方が多いということを感じています。投票いただいた方々の熱意に応えるべく、10月14日には美しい姿でお披露目したいと思います」(主原さん)とのことだ。

「現役車両」が入線できる

ところで、京都鉄道博物館ではもう1つ、これまでの鉄道展示施設にはない取り組みが行われている。それは、「車両工場エリア」での車両特別展示だ。ここには営業中の線路につながる引き込み線があり、現役で活躍中の車両が入線できるようになっている。

開館から間もない2016年7月には保線に使われる軌道モーターカーを、翌8月には信号や軌道の状態を検測する「ドクターWEST」ことキヤ141系を展示して以降、これまで20車種以上を展示してきた。

「瑞風」が間近で見られるとあって多くのファンが詰めかけた(筆者撮影)

「観光車両はもちろんですが、近年は営業車両も予備車が少ないため、スケジュールの調整にかなり苦労することも多いです。さまざまな部署に協力してもらって展示にこぎつけ、多くの方の笑顔が見られたときには、そんな苦労も吹き飛びます」(主原さん)

特に主原さんの印象に残っているのが、2017年11月に展示された103系。「当館にはクハ103形1号車を収蔵しており、また前月まで大阪環状線で走っていたにもかかわらず、予想を大幅に上回る来館者数を記録しました。中には『大阪環状線で見送りできなかったから、最後にもう一度会いに来た』という地元の方もおられました」(主原さん)。いかに103系が愛されていたのかがわかるエピソードである。

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