ここぞの場面で「緊張する人、しない人」の大差 心拍数上昇、激しい動悸、声が震える人の対処

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そもそも緊張状態は、脳内神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンのバランスが崩れて、交感神経が活発になりすぎ、自律神経が乱れたときに起きます。その結果、心拍数が上がり動悸が激しくなり、手足や声は震え、冷や汗が出たり、赤面するといった「症状」がもたらされます。私たちが大事な場面でテンパるのは、医学的には自律神経の乱れに原因があったのです。

例えば、いまこの瞬間、お腹を空かせた獰猛なライオンと対峙してしまったとしましょう。すると、あなたの交感神経は一気に活発になり、自律神経のバランスが崩壊し、逃げ出そうにも頭の中は真っ白。冷静な判断はできず、その場でガチガチになってしまうことが想像できませんか? これがまさに究極の緊張状態です。

緊張は人に備わっている本能的な反応

日頃から緊張しやすい人は、“ライオン”が「プレゼン」であったり、「商談」であったり、「上司への報告」であったり、「初対面の人に会う」であったりするのでしょう。ライオンを怖がるなといっても無理ですよね。緊張というのは、もともと人間に備わっている本能的な反応ですから。

でも一方で、プレゼンがライオンだなんて大げさな、と笑う人もいるでしょう。そのような「緊張しない人」と「緊張する人」には心の奥底にどんな違いがあるのでしょうか。

私は、緊張しやすい人は「何事もなく平穏に終わってほしい」「大事な場面を無事に乗り切りたい」「成功したい」という思いが人一倍強いと考えています。無意識にそう思ってしまっているのです。

あなたが緊張して失敗してしまった場面を振り返ってみてください。そのときあなたは、「人生の一大事」「失敗できない」という気持ちが強くなかったですか? 先ほどのライオンの例でいうと、「生き残りたい」という思いが強い人ほど、逆に緊張して生き残るための行動ができなくなってしまうのです。

一方、緊張しない人は、プレゼンや商談などは「人生にとってさまつなこと」「失敗しても構わない」「むしろ楽しい」と思っています。意識的にそう考えているのではなく、無意識レベルでそう捉えているのです。すると結果として、自然体で話をすることができ、ビジネスでもどんどん成果を上げていきます。

世間には「緊張しているからこそうまくいく」と考えている人がいます。それはおそらく、一流スポーツ選手やアーティストが深い集中状態に入る「ゾーン」のような状態を指しているのだと思います。いやいや、私たちはビジネスの現場で、自然体で話したいだけなのですから、そんなものを目指す必要性は皆無です。

それよりも、普段通りに話せることが、仕事上で信頼感を得るためにははるかに重要だと思います。だから、緊張は「生かす」ものではなく、「とる」べきものなのです。

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