「愛玩子」と「搾取子」をつくるゆがんだ親の心理 兄弟格差をつけることに何の意味があるのか

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もちろん、すべてを親のせいにするつもりはない。だが、小島被告が常日頃から感じていた姉との格差が被害者意識を生み、それによる怒りと欲求不満が犯行の背景にあったことは否定しがたい。

小島被告の家庭では、姉が親からかわいがられ、お金をかけてもらえる子だったのに対して、小島被告は親からかわいがられず、お金もかけてもらえない子だったように見える。このように兄弟姉妹で親から差別される場合、ネット上のスラングで前者を“愛玩子”、後者を“搾取子”と呼ぶことを最近知った。

“愛玩子”をすぐ変える親

精神科の診察室で患者から、「自分はずっと“搾取子”だったので、親を恨んでいるのですが、そのことについて親に何も言えません。そのため、もんもんとしています。どうしたらいいでしょうか」と相談を受けたこともある。だから、精神科医としての臨床経験からも、“愛玩子”と“搾取子”という対比は的確だと思うのだが、“愛玩子”だからといって幸福とは限らない。

問題は、すぐ“愛玩子”を変える親である。こういう親を持つと、自分は“搾取子”だからと諦め、それなりに安定していたのに、“愛玩子”だった兄弟姉妹が親の思いどおりにならなくなったため、親の関心が急に自分に向けられるようになり、当惑することもあるようだ。

例えば、20代の女性は、実家で両親と暮らしているが、「3歳年上の姉が結婚して家を出てから、母親の関心が自分に向くようになり、息苦しくなった」と訴え、その理由について次のように説明した。

「姉は子どもの頃から成績がよく、学級委員も務めるなど活躍していました。両親からの期待も、とても大きかったと思います。一方、私の成績は平凡で、学校でも目立たないタイプでした。学習塾やピアノ教室に通うときは、姉は授業料の高いレッスンを受け、私は安いコースに通うのが常でした。服やおもちゃも、姉のお下がりをもらうことが多かった記憶があります。

小学校の授業参観日には、忘れられない出来事がありました。その日、私は母が授業参観で来校している姿を見たのです。ところが、母は私の教室には一度も立ち寄りませんでした。どうやら姉の授業だけを見て、こちらの教室に立ち寄る時間がなくなったらしいのです。子ども心に、かなりショックでした。

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