「愛玩子」と「搾取子」をつくるゆがんだ親の心理 兄弟格差をつけることに何の意味があるのか

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「中学生になると、僕が自分で料理をするようになりました。コメや野菜などを買ってきて、最低限ご飯と味噌汁だけはつくるようになったのです。

しかし、母は口にせず、お酒ばかり飲んでいました。こんな生活をしていたら、体を壊すのは当然で、母は僕が高校生のときに肝硬変によってできた食道静脈瘤が破裂し、血を吐いて亡くなりました。そのときの光景を思い出すたびに、胸がドキドキして、息が苦しくなり、死ぬのではないかという不安に襲われるのです」

壮絶な体験である。この男性の母親はおそらくアルコール依存症だったのだろう。そのせいでネグレクト(育児放棄)が当たり前の家庭で育ったので、食べものを自分で調達するしかなかったわけだ。

この母親は明らかに身体的にも精神的にも病んでいるし、貧困家庭である。ところが、親が病気でもなく、家庭が貧しいわけでもないのに、子どもに必要なものを与えない親の話を聞くことも少なくない。

ブラジャーを買ってもらえない

女性で多いのは、ブラジャーを買ってもらえなかったという話である。実は、私も中学生の頃ブラジャーを買ってもらえず、「ブラウスから透けて見えていると男子が笑っていた」と友人から言われて、自分の小遣いで慌てて買った苦い思い出がある。

精神科医になってから、女性患者から「ブラジャーを買ってもらえず、恥ずかしい思いをした」という話を聞く機会が少なからずあった。また、摂食障害の娘を持つ母親から「中学生のときにブラジャーを買ってあげなかったことで娘から責められて困っている」と相談を受けたこともある。

以上のことから、ブラジャーを買わない親、そしてそういう親のせいで恥ずかしい思いをして、大人になっても親を恨んでいる娘はかなりいると考えられる。これは、娘が“女”として成熟した身体を持つようになったことを受け入れられない親が多いからではないだろうか。

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