中東情勢の緊迫化が大幅な原油高を招き、インフレや金利上昇をもたらすかもしれない。たとえば、1970年代に起きた高インフレは、中東戦争などの原油供給減少が原油価格やインフレ率の大幅上昇がもたらしたとの見方が根強い。
1970年代の高インフレの原因とは?
しかし、今回の原油価格の上昇は、全体のインフレ率(一般物価)に決定的な影響を及ぼさないと筆者は判断している。1970年代に起きた各国のインフレ率の上昇は、原油高だけではなく、当時経済成長率が高まっている中で、行き過ぎた先進各国の拡張財政と金融緩和政策が行われたことが最大の原因であったからだ。
現在のように、低インフレの長期化が大きな問題となっている経済状況は、財政金融政策が十分に緩和的に作用していないことを意味するだろう。こうした中で、原油価格が今後上昇しても、一般物価である消費者物価にまで及ぶ影響は限定的である。
原油価格が急騰した9月16日に、米欧の金融市場では、株安と金利低下が起きた。1日の金融市場の値動きだけで判断することは早計だろうが、中東情勢への不確実性がもたらした原油高は、総需要の停滞による経済成長・インフレの下振れをもたらすと筆者は考えている。
つまり、今後のインフレ率の動向に、原油価格よりも大きな影響をもたらすのは、米中など世界経済の動向である。これに影響を及ぼす政治要因の中で、米中貿易交渉において10月に予定されている高官による協議で、何らかの合意が行われるとの見方が9月初旬から高まっている。アウトサイダーである筆者が、米中政治家の真意をうかがい知るのは難しい。
しかし、筆者は「アメリカが、現在表明している対中関税引き上げをいずれ実現し、また関税引き上げを中止するような政治的譲歩を中国政府が行う可能性も低い」と、予想している。そして、米中を中心とした世界経済については、関税引き上げの悪影響が今後更に強まる中で、2020年半ばまで減速が続くと見ている。このため、総需要が減速するためインフレ圧力はむしろ低下する可能性が高い。
これらを踏まえると、一時1.9%台まで大きく上昇したアメリカ10年国債金利は、今後FRBによる断続的な利下げが想定される中で、緩やかながらも低下に転じると予想する。そして、日本銀行が主要先進国の中で最も金融緩和に消極的な姿勢を保つと予想されるため、再びドル円相場では円高が訪れるのではないか。
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