義父の介護の最中に乳がんが発覚したワーママ 夫は単身赴任で1年のほとんどは不在だった

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「側にいてほしいと思ったこともありましたが、単身赴任だったから依存しすぎずに済んだのかも。夫は自分ができないことは割り切るタイプ。『君はしっかりしてるから家のことは全部任せる。俺はそれに感謝するしかない』って昔からよく言っていました」

そのため両親のことも、近くに住む弟と佐藤さんに任せきり。佐藤さんはずっと「長男としてもう少し頑張るべきでは?」と思っていた。

そこへ、佐藤さんががんになり、義父が亡くなった。

「私に任せられなくなって初めて、夫に長男としての自覚が芽生えたみたいで、結果、よかったと思います」

父親の葬儀で喪主を務めた後、夫は「家族であんなに父の話をしたことはなかった。いい時間だった」と晴れ晴れとしていた。

自分を大切にしないと他人に優しくできない

妹や義両親が病気にならなかったら、生前整理との出合いはなく、自分自身ががんにならなかったら、妹のことも義両親のことも、子どものことも仕事も、全部1人で抱え込んで、遅かれ早かれ身体を壊していたかもしれない。

「病気のおかげで、立ち止まる機会ができた。長い目で見たらきっと必要な時間。ずっと自分さえ頑張ればいいと思ってきたので、今後は『まず自分を大切にしないとほかの人に優しくできない』ということを肝に銘じて生きたいと思います。

最近ようやく自分ががんになったことを話せるようになってきました。自分の経験を誰かの人生に役立ててもらえたら、私が病気になったことも、意味があることなんだと思えます」

佐藤さんは再建手術の後、2019年4月に復職。生前整理アドバイザーの仕事も同じタイミングで再開した。

一時は起業も視野に入れていた佐藤さんだが、今は無理せずダブルワークを続けていきたいと考えている。

旦木 瑞穂 ライター・グラフィックデザイナー

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たんぎ みずほ / Mizuho Tangi

愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する記事の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。

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