欧州で伸びる鉄道利用、理由は「飛ぶのは恥」 航空会社も短距離区間は鉄道シフト促す動き

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鉄道と航空機の競合について語る場合、必ず出てくる「4時間の壁」というキーワードがある。高速鉄道を利用する場合、所要4時間、800km程度までは、空港までの移動やチェックイン、搭乗までの待ち時間などを加味すると鉄道が優位で、それを超えてしまうと、所要時間の面で航空機にはかなわないという1つの目安である。

東海道・山陽新幹線の東京―博多間のシェアはわずか7%。4時間を超える行程の場合、多くの人は航空機を選ぶのが一般的だ(筆者撮影)

日本で言えば、東京―広島間がちょうどその境目と言われている。ただし、これはあくまで最高速度が時速250~300kmの高速鉄道と比較した場合の話で、高速鉄道がない地域の場合、今も航空業界が優位なことには変わりがない。

だが、こうした環境運動が浸透し、鉄道利用へシフトしていくことで、この4時間という目安が5時間、あるいは6時間と、多少伸びていく可能性はあるかもしれないし、高速鉄道がない区間に関しても、鉄道の利用が見直される可能性もある。

航空会社も鉄道シフトの動き

実際に、Flygskam運動発祥の国スウェーデンや隣国ノルウェーは、高速鉄道を持たないにもかかわらず鉄道利用客数が伸びており、国によってその意識に多少の違いはあるだろうが、将来的には少なからず影響が出ることは避けられないだろう。

ニース駅に到着したTGV。ニースからパリまでは約6時間で、航空機を利用するのが一般的だが、近い将来は鉄道のシェアが増えるかもしれない(筆者撮影)

こうした情勢を見ると、欧州では今後、所要時間に極端な差がない区間は鉄道利用者が増加していくことが考えられる。航空業界、とりわけ各国のフラッグキャリアは、鉄道での移動が不可能な欧州域外や、あるいは欧州域内でも鉄道での移動が不便な区間や長距離路線へとシフトしていくことが予想される。

KLMオランダ航空は9月13日、地元オランダ鉄道および高速列車を運行するタリスと提携し、2020年3月29日からアムステルダム―ブリュッセル間に運航される5便のうち、1便を列車へ置き換えると発表した。同系列のエールフランスが、パリからのTGVやタリスで行っているのと同様のサービスで、いずれ他の便についても徐々に置き換えていく予定だ。

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