大手私鉄で「最も儲かっていない」路線は? 各社の収支を基に「営業係数」を独自試算!

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一時期、大株主から不採算路線の廃止を求められたことがあった西武鉄道。営業係数で見るとどうなるだろうか(写真:うげい / PIXTA)

鉄道会社の各路線の営業係数、つまり100円の収入を得るために要する費用を示す数値は多くの場合公表されていない。近年はJR旅客会社の一部から発表されるようになったものの、私鉄などではほぼ皆無と言ったところだ。

そこで、各社の収支を基に、収入は主に旅客人キロ(運んだ旅客数にそれぞれが乗車した距離を乗じた数値)の比で、費用は旅客人キロの比と営業キロの比とでそれぞれ分配して各路線の営業係数の算出を試みることとした。参照した資料は国土交通省鉄道局による『鉄道統計年報』の平成20(2008)年度版と同じく平成25(2013)年度版である。今回は大手私鉄各路線の営業係数を紹介し、特徴のある路線について解説していこう。

「平均通過数量」に注目!

試算した営業係数をご覧になる際にぜひとも参考にしてほしい数値がある。平均通過数量だ。この数値は旅客人キロを年間の営業キロで除して求められ、ある路線の1km当たりの利用者数を示す指標として用いられる。

平均通過数量は旅客輸送密度ともいい、一般に知られるようになったのは旧国鉄時代の1981(昭和56)年3月11日に施行された「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法施行令」で、国鉄の各路線の判定基準として登場してからだ。同施行令に基づき、平均通過数量が4000人以上8000人未満の路線は地方交通線、4000人未満の路線は特定地方交通線と定められた。そして、前者は割り増し運賃を徴収して収支の均衡を図り、後者はいかなる努力を行っても収支の均衡化が難しいとして国鉄から経営が分離され、今日に至っている。

現在、平均通過数量が4000人未満の路線を廃止としようとすると、地方の大多数の路線が姿を消す羽目に陥ってしまう。こうした路線では、JR各社の地方交通線の運賃よりもさらに割高な運賃を設定して存続を図っているというのが実情だ。それでも1000人未満の平均通過数量では厳しいといえる。

営業係数が100を下回る、つまり営業利益が生じる平均通過数量がどのくらいかというのは一概には言えない。設備投資を行って多大な減価償却費が存在するといった特別な条件が存在しない限り、2万人以上であればほぼ大丈夫、3万人以上でまず間違いないという状況となるであろう。

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