大手私鉄で「最も儲かっていない」路線は? 各社の収支を基に「営業係数」を独自試算!

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西武鉄道は一時期大株主から不採算路線の廃止を求められたことがあった。聞けば、筆者が過去に作成した同社各路線の営業係数の試算を参考にしたのだという。

今回の試算で問題となるのは2013(平成25)年度の営業係数が256・4となった多摩湖線(国分寺-西武遊園地間9・2km)、275・5となった多摩川線(武蔵境-是政間8・0km)である。時期が時期であれば、廃止の対象とされていたかもしれない。

とはいえ、同年度の平均通過数量は多摩湖線で2万2157人、多摩川線で1万9882人と比較的多く、営業利益が生じていないにしても営業係数は少なくとも100台であってしかるべきであろう。このあたりが試算の限界と言える。

京成電鉄の東成田線(京成成田-東成田間7・1km)は2013年度の営業係数の試算結果が544・3と大手私鉄の各路線中、最もよくない。現実に平均通過数量も1969人と、こちらも『鉄道統計年報』に記載されている大手私鉄の各路線のなかでは最小だ。

もともとこの路線は成田国際空港に勤める人たち向けに京成電鉄が自ら手を挙げて建設された。同空港の開港の遅れ、開港後も輸送人員が伸び悩んだことから、1980年代に京成電鉄が経営危機を迎えた原因の一つとなったいわく付きの路線である。いまは旅客ターミナルのある成田空港駅に乗り入れて営業係数も71・5と良好な本線に支えられていると言ったら言い過ぎであろうか。

京成電鉄全線の2013年度の平均通過数量は6万8012人と、2008年度の9万1088人から25・3パーセントも減っている点に気づく。これは2010(平成22)年7月17日に開業した成田空港線京成高砂~成田空港間51・4kmが影響を及ぼしている。同線の平均通過数量は2万0526人と、もともと同社全線の平均通過数量を引き下げる要因を備えているうえ、営業キロは同社の全線の152・3kmに対して34パーセントを占めているからだ。

大躍進した京急空港線

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空港線の躍進が目立つ京急電鉄(写真:ゆうじ / PIXTA)

京浜急行電鉄は空港線(京急蒲田-羽田空港国内線ターミナル間6・5km)の躍進ぶりが目立つ。営業係数が2008年度の141・0から2013年度に121・4へと改善された要因は、平均通過数量が2008年度比28・7パーセント増の10万6739人となったからだ。

『平成25年版 都市交通年報』(運輸政策研究機構、2016年2月)によると、羽田空港国内線ターミナル駅の2011(平成23)年度の乗降者数は1日当たり12万6727人を記録したという。同じ東京国際空港に乗り入れる東京モノレールの東京モノレール羽田空港線羽田空港第1ビル、羽田空港第2ビル両駅を合わせた1日当たりの乗降者数は5万9168人であり、空港線の優位は揺るぎない。

京浜急行電鉄の鉄道事業における減価償却費は185億3382万2000円である。営業キロの比で分配したために空港線には13億8500万円しか割り当てられず、試算では7億1331万6000円の営業損失しかされなかった。したがって、空港線の実際の減価償却費はさらに多いはずで、営業損失はさらに膨らむであろう。それでも、これだけの好調な平均通過数量を見ると、いずれ空港線は京浜急行電鉄の儲け頭に躍り出るはずだ。

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