じわり増える「ネオ和食」とはいったい何か 食通が通うフィッシュバーガーの店も

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一方で、「国民食」といわれるものは、カレーライスやラーメン、ナポリタンやギョウザなど、もともとは外国料理として入ってきたが、日本人好みにアレンジされて定着した料理が多い。私たちは日本人なのに、外国料理ばかりを好んで食べるのだろうか? コメやしょうゆ、みそなどの消費量は年々減っている。和食は衰退していくのだろうか?

そうした変化を踏まえ、近年流行しているのが、自由にアレンジしつつ伝統的な和食材や調味料を使うネオ和食なのだろう。それは私たちの食文化を見直し、古くからあるものと外から入ってきたものを再構成した料理といえる。

ネオ和食がはやっている理由

その意味で、パンを使い洋風のソース用調味料を和風にアレンジをして使う、デリファシャスの和風バーガーは、ネオ和食の1つといえる。みそや塩麴を加えたパンも、和総菜を組み合わせた総菜パンも、ネオ和食といえるだろう。

固定観念を崩し、日本で日本人が作ったものを和食、と考えれば、新しい和食は突然生まれたものではないことに気づく。実はこれまでにも創造が行われており、今は第4期といえる。1度目は、サラリーマン層が生まれた大正時代から昭和初期に、西洋料理を日本人好みにアレンジした、とんかつやカレーライスなどの「洋食」が生まれたこと。

2度目は、主婦の大衆化が進み、テレビなどを介してたくさんの「洋食」や「中華」のレシピが家庭に入り込んだ高度経済成長期。3度目は、1990年代に世界各国・地域の料理がはやった後の2000年代初頭のカフェ飯ブーム。そして、今。

それらの料理は今まで和食とはされてこなかったが、どれも日本人がご飯に合うようアレンジしたものである。外国から来たとはいえ、欧米や中国で食べられている料理とは異なる。そういう料理を和食に入れてもよいのでは、というのがネオ和食の考え方だ。

今、ネオ和食がはやるのは、外国との交流が活発になっているからと考えられる。移民が増加して本格的なアジア飯を出す店が増えて流行する。外国人観光客が増える。日本の飲食店の海外進出が増える。そういった刺激を受け、私たちのオリジナルとは何か、世界に通用する食とは何かを考える人が、増えているためではないだろうか。

伝統回帰を求め、「こんなのは和食じゃない」と新しい料理を批判するのではなく、どんどん変わっていく社会で受け入れられる食べものとは何かを考える。そういう現実的で建設的な時代が訪れている。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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