斎藤工と永野が手がける「壮大な復讐劇」の正体 映画製作会社に軒並み断られた「MANRIKI」

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斎藤:そうそう、ファッション前衛。

永野:ファッションパンクみたいな(笑)。

斎藤:なんか、そういう人たちに『MANRIKI』を手放したことを後悔させたいという欲望は、ここ何年かずっとあって。で、僕としては、この映画は最終的に日本に戻ってくればいいぐらいに思っています。永野さんを「ラッセンの人」とか、最近だと「クワバタオハラの人」とだけ捉えている人たちに後悔させたい。永野さんをそこだけで捉えていることがどれだけ損失なのか、という。

たぶん全員が全員じゃなくても、100人に1人でも、人生を覆すような映像体験になる人もいる。そういうものができたと思います。

「客に寄せる」だけが芸じゃない

――永野さんにも、もともとそういう復讐心のようなものはありそうですよね。

永野:復讐心は確かにありますね。そういう意味では、いま使えないフレーズかもしれないですけど、この映画は「反社」ですよ(笑)。

――はい、使えないです(笑)。確かに映画を拝見しましたが、永野さんと斎藤さんががっちりかみ合っていて、主演の斎藤さんが演じている人物がだんだん永野さんに見えてくるような不思議な感じはありました。

永野:ですよね。工くんが運転している車が脱輪するシーンがあるじゃないですか。あれで「クソッ」と思って降りていって、ほかの人に協力してもらっているのに、面倒くさそうに押すあの感じが、僕だと思ったんです。やってるんだけど力入れていない感じとか。

斎藤:あれが永野さんなんです。

永野:韓国の映画祭でワールドプレミア初公開があって、お客さんの間で見たんですけど、すごい笑いにあふれていて感動しました。外国の方だから、僕を「ラッセンの人」とも思っていないし、工くんに対して「セクシーですね」みたいな捉え方もしていない。もちろん工くんのファンもいますけど、日本とは全然違う状況で笑いを取ったので、それは嬉しかったです。

今の時代って「客に寄せる(合わせる)ことがエンターテインメントだ」ってみんな言うし、お笑いの現場でもいまだにそうやって怒られているんですけど、僕は見ている人はそこまでバカじゃないと思っています。だから、ワールドプレミアであれだけ反応があったときに、「寄せたほうがいい」と今まで言ってきた人に対して「バカにするなよ!」って思っちゃいました。「通じたな」という瞬間は本当に嬉しかったですね。

斎藤工/1981年生まれ、東京都出身。2001年に俳優デビュー。今年は日仏シンガポール合作『家族のレシピ』(主演)、日露合作『ソローキンの見た桜』、『麻雀放浪記2020』(主演)、『MANRIKI』(企画、プロデュース、主演)(19)など。『ヲタクに恋は難しい』、『糸』(20)、『シン・ウルトラマン』(主演・21)など話題作の公開も控えている。齊藤工名義でFILM MAKER としても活躍し、初長編監督作『blank13』(18)では国内外の映画祭で8 冠を獲得。HBO ASIA のオムニバスドラマ企画第二弾「FOODLORE」でも前回作品『TATAMI』に引き続き日本の代表監督として『Life in a box』で参加。日本のコンプライアンスをテーマにした映像作品『COMPLY+-ANCE』を製作するなど意欲的に映像制作に携わっている。
永野/お笑い芸人。1974年9月2日生まれ、宮崎県出身。A型。1995年、ピン芸人としてデビュー。「ゴッホとピカソに捧げる歌」などのシュールなネタで注目を集める。
ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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