斎藤工と永野が手がける「壮大な復讐劇」の正体 映画製作会社に軒並み断られた「MANRIKI」

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――斎藤さんはプロデューサーとしてどういうふうに内容に関わっていたんでしょうか?

斎藤工(以下、斎藤):単純に、永野さんの脳内の世界観が健全に映像化されたら、海外の映画ファンは驚き喜ぶだろうし、国内の評価は後からついてくるだろうな、というのがずっと見えていました。

で、そのためには何ができるか、ということは常に考えていました。だから、自分で映画を撮るという選択肢は最初からなく、監督は清水さんしかいないだろうなと。清水さんと金子ノブアキくんと僕の3人は、みんな永野さんを芸人というかアーティストだと思っているんです。そこの共通理念が関わっているスタッフやキャストさんにもどんどん広がっていきました。

本当に永野さんの表現の芸術性に反応した人たちが集まって、作っていくことになった。その座組みが最終的に組めたので、僕はそれを見守るみたいな立場でした。

斎藤工「僕にとっての壮大な復讐劇」

――完成した作品をご覧になった感想はいかがでしたか?

斎藤:僕は「ここをこうしたほうがいい」というより、それぞれの才能が開花していればたぶん間違いないところに行くだろうな、とは思っていました。清水さんの映像センスと永野さんのエッセンスが軸にあって、金子ノブアキくんの最高の音楽があって。制約をなるべくなくして、羽根を広げてもらえたら間違いないところに行くな、という確証どおりになったと思っています。

そもそも永野さんに初めてその話を聞いたTGC(東京ガールズコレクション)の夜に「これは僕が今まで影響を受けてきたヨーロッパのカルト映画に匹敵するな」と思ったんです。日本映画でそういうものってないし、すごい強度のある映画になるんじゃないかな、と。

それに歓喜するヨーロッパの映画ファンもすぐに浮かびました。僕は映画の骨組みとかにも口を挟まなかったです。清水さんはエディター(編集者)としても超優秀なので、いいものになるだろうと思っていました。

そんな作品が大成功と言ってもいい賞を受賞して(第23回プチョン国際ファンタスティック映画祭で「EFFFF Asian Award」を受賞)。その賞は、ヨーロッパのキュレーターが海外に売っていきたいアジア映画の中の1位という賞だったので「あっ、これはいける」という状況ではあります。

僕にとってこれは壮大な復讐劇なんですよ。というのは、この企画書を持ち込んで大手映画製作会社をいくつも回ったんですけど「個人的にはいいと思う。でも……」と言って、会社のルールのために乗ってこなかったプロデューサーたちがいたんです。

もちろん、その会社もプロデューサー個人も責めるつもりはないです。今ってそれだけ損をしない、赤字を生まないプロジェクトしかないんですよ。そうやってほぼ全社断られたのがこの企画です。だから、その断った人たちを後悔させたいというミッションも僕の中に生まれました。

もう、個人個人が浮かんでくるんです。その人がいま何を作っているかもわかっているし。見た目はなんというか前衛的でも、作品は保守的で。

永野:ファッション前衛だ。

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