夫たちが「育休よりも時短」を取るべき深い理由 育休を3回取ったサイボウズ社長が語る

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私の場合は、1人目のときに取った2週間の育休でも心理的抵抗があったんです。でも短時間勤務なら会社とのつながりも切れないので自分自身安心できますし、何より会社の人たちも、仕事で何かあった時に社長がまったく会社に出てこないよりは楽ですよね。しかも家庭での評判もいい。

短時間勤務を一度経験しておくと、子どもの突発的な出来事に焦ることなく、短時間で会社を抜けられるようになる。だから男性育休を取得するよりも、実は男性に短時間勤務を試してもらうほうが面白いのではないかと思います。

「企業対社員」「企業対個人」の関係

――公開鼎談のため質問が届いていますので、ご紹介します。「これからの時代は、会社と個人が対等な立場でリソースを提供していかなければいけないと感じています。企業コンサルティングをしていると、会社と社員のパワーバランスでいうと、明らかに社員のパワーの大きいケースがいくつも見受けられました。対等な関係にしていくにはどうしたらいいでしょうか。アドバイスをお願いします」。お三方で、お答えいただけますでしょうか?

青野慶久(あおのよしひさ)/サイボウズ株式会社代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工株式会社(現・パナソニック株式会社)を経て、1997年、愛媛県松山市を本拠にサイボウズ設立に仲間とともに参画。取締役副社長に就任。2005年に代表取締役社長に就任する。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を7分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーや、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の副会長を務める。著書に『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』など(撮影:今井康一)

青野:私からすると「会社と社員のパワーバランス」という言葉が、ダメだと思うんです。会社は実在しません。会社は法人なので、法律上存在すると仮定された人のことですよね。なので「会社と社員の関係」と言っても、会社を指で指せないでしょう? 建物の中にいるのは、人でしかないんですね。経営者と一般社員の関係、部長と課長の関係はあるかもしれません。でも「会社と社員の関係はまず存在しない」ことを理解していただきたいのです。

それでご質問のパワーバランスの話は、経営者の力が下がっているということですよね? だとすると、経営者は社員に働きかけたほうがいいですよね。鼎談の途中で出てきた「すみません。誰か仙台に行ってくれませんか?」というように。私はある意味、これが自然な形だと思っています。

「私の野望のために力を貸してもらえませんか?」とお願いして、「仕方ないか(笑)」と集まってくれたのが、今のサイボウズです。しょせん建物の中にあるのは、人と人との関係だけ。だから一人ひとりの顔を見ろということです。社員が何を望んでいるのか? 誰に何をお願いしたいのか? その部分を見直すのがいいと思います。

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