あなたは「屋久島」の奥深さを知っていますか 思わず人に話したくなる蘊蓄100章で綴る

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80. それぞれの山には「一品宝珠大権現」が祀られているが、その総本山が宮之浦の「益救神社(やくじんじゃ)」。

宮之浦にある「一品宝珠大権現」総本山の益救神社(写真:takanpo/PIXTA)

81. 〈救いの宮〉とも呼ばれ、トレッキングや登山前の安全祈願に訪れる人も多い。

82. 「牛床詣所(うしどこもいしょ)」は里における山岳信仰の聖地で、岳参りした男性陣を家族が出迎えた場所。

83. 現在ではうっそうとした森の中にあり、60余りある石塔も苔むしているが古来の山岳信仰を知る貴重な場だ。

84. 屋久島最大の祭りが毎年8月上旬に行われる「屋久島ご神山祭り」である。

85. 山の神に感謝を捧げ、ご神水とご神火で無病息災を祈るもので、里の人々の平和への思いが込められている。

86. 旧暦5月25日に安房で行われる「如竹踊り」は、屋久島の聖人・泊如竹の遺徳を後世に伝えるために生まれた。

87. 如竹は江戸時代に薩摩藩に仕えた僧侶・儒学者で、島の困窮を知り藩にスギの伐採を願い出たといわれる。

88. 彼の没後、安房集落の人々が如竹踊りを創作し、命日である5月25日に踊り伝えてきたのである。

89. かつては19~41歳までの青年・壮年を踊り手としたが、1966年以降は如竹踊り保存会が結成され継承されている。

90. 麦生集落の盆踊りは「ナギナタ踊り」と呼ばれ、300年余り前から伝承されている。

91. お盆の13日の夕方に寺と村の中心で踊り、15日の朝は寺・神社・海岸で、夕方は墓地・村の中で踊られる。

92. 手踊り、棒踊り、ナギナタ踊りの3種類があり、歌は6種類あるという。

十五夜にちなんだ伝統行事

93. 旧暦8月15日に屋久島の各地で行われるのが「十五夜綱引き」という行事だ。

94. 十五夜当日に綱の材料を集めるところから始まり、直径20cm×長さ40mほどの大綱を編み、月に向けて供える。

95. 日没後、月の出を迎えると人々は綱引き歌を口ずさみながら綱引きをし、その大綱で作った土俵で相撲をとる。

96. 大綱は蛇(龍)の見立てで、月の満欠と蛇の脱皮にみる再生能力にあやかり、健康長寿と豊年を願うのである。

97. 自然と魅力あふれる屋久島を訪れる旅行者は年々増加しているが、なかでも人気を集めるのが「白谷雲水侠」だ。

98. 宮之浦川の支流・白谷川上流にある自然休養林で「弥生杉」「奉行杉」「七本杉」などの屋久杉も見られる。

99. 映画『もののけ姫』のモデル地としても知られ、1995年5月と7月にはジブリスタッフによるロケハンも行われた。

100. そのイメージは主にシシ神の森やモロー一族の住む岩屋の描写などに活かされているといわれている。

(文:寺田 薫/モノ・マガジン2019年10月2日発売号より転載)

参考文献・HP/「歩く日本の世界遺産」(学研パブリッシング)「鹿児島県の不思議事典」(新人物往来社)「九州の山岳」(海鳥社)「現代民俗学の視点」(朝倉書店)屋久島町公式ウェブサイト、屋久島観光協会OfficialWebsite、屋久島トレッキングナビ、屋久杉自然館、屋久島経済新聞、朝日新聞デジタルほか関連HP
モノ・マガジン編集部

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