鎌倉市民が悩む「観光渋滞」は解消できるか 江ノ電実証実験や観光マイカー課金も実施へ
神奈川県鎌倉市は、海と山に囲まれた狭い市街地に観光客の大量の自家用車が流入することから、渋滞が慢性化するとともに、沿線住民の通勤・通学の足にもなっている江ノ電が混雑し過ぎて市民生活に支障が出るなど、交通対策が喫緊の課題になっている。
このような課題に対し、江ノ電において、駅の外にまで行列ができた場合にあらかじめ発行した「沿線住民等証明書」を所持する住民を優先的に乗車させる実証実験が2017年5月の連休中に行われた。また、9月には、国土交通省が公募した観光地における渋滞緩和を目的とする「観光交通イノベーション地域」に京都市と並んで選ばれ、今後、エリア内の一般道を走行する自動車に対して課金する仕組み「観光マイカー課金」導入が検討されていることが報道された。
本稿では、昨年10月の市長選で3選を果たした鎌倉市の松尾崇市長に、観光マイカー課金と江ノ電の実証実験を中心に、今後の交通対策について話を聞いた。
一定のエリアを走行する自動車に課金
前提として、観光マイカー課金がどのようなものか、簡単に整理しておこう。
国交省は、社会資本整備審議会の道路分科会における、課金を含めた観光地の渋滞解消の必要があるとの議論を踏まえ、2017年8月に「観光交通イノベーション地域」の公募を実施した。これに応募して選ばれた京都市と鎌倉市では、今後、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)等の技術を活用した交通量などのデータ収集・分析を行う。その後、法整備等を踏まえ、一定エリア内を走行する自動車に対して課金する「エリアプライシング」を含む交通需要制御(TDM)など、エリア観光渋滞対策の実験・実装を行っていく計画だ。
以前から渋滞が問題になっていた鎌倉市では1995年に初めて交通渋滞の対応に特化した研究会「鎌倉地域交通計画研究会」が設置され、2001年までの間、特定の道路を走行する自動車に対して課金する「ロードプライシング」導入が検討された経緯がある。このときは、一部の市民の反対運動により実現に至らず、計画は白紙撤回されたが、松尾氏がロードプライシング導入を公約に掲げるなどし、再び検討が始まった。
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