鎌倉市民が悩む「観光渋滞」は解消できるか 江ノ電実証実験や観光マイカー課金も実施へ

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――2017年5月6日には江ノ電で沿線住民の優先乗車の実証実験を行った。しかし、連休最終日前日の上、晴天に恵まれず、優先乗車の利用者が一人もおらず、実験は空振りに終わった。今後、同様の実験を行う予定はあるか。

大船と江の島を結ぶ湘南モノレールは、交通対策のカギの1つになりそうだ(筆者撮影)

実験初年度ということもあり、混乱を懸念する江ノ電の要望を受け、連休中、最も混雑しない6日に実施した。およそ1200人の沿線住民の方々が、事前交付の沿線住民等証明書を取得するなど、関心と需要が高いことが分かったので、2018年のゴールデンウィークは、実験実施日を広げるなど働きかけていきたい。

――江ノ電の混雑緩和という意味では、湘南モノレールへの乗客の振り分けも課題ではないか。同社では駅のバリアフリー化を順次進めているほか、2018年にICカード導入を計画するなど、経営努力が著しい。

大船から江の島にモノレールで移動し、江の島から江ノ電で鎌倉に入るモデルコースの魅力を、もっと発信していければと思う。

市民の税収だけではインフラを支えきれない

――市庁舎を湘南モノレールの湘南深沢駅周辺に移転する計画と聞いているが、現在、どのような状況か。また、移転した場合、現市庁舎の跡地に関して、例えば、大型バスも駐車できるスペースも確保するなど、交通政策と絡めた利活用の計画はあるか。

インタビューに応じた松尾崇・鎌倉市長(筆者撮影)

市庁舎の移転は、2017年3月に市の方針として発表している。移転先については、公有地活用検討委員会における「公有地活用方針素案」に、深沢への移転を盛り込んでいる。ただし、市庁舎の移転は議会における議決事項であり、最短でも7年先となる。また、移転後の跡地に関しては、今のところ、バスの駐車スペース等の確保については検討していない。

――最後に、ロードプライシングの実施に関してメッセージをいただきたい。

鎌倉へは、年間で延べ2300万人のお客様に来ていただいているが、現状、充分な受入体制ができていないと反省している。一方で、17万人の鎌倉市民の税収だけで、これだけの観光地のインフラを整えていくには限界がある。鎌倉は市民だけのものではなく、来ていただくお客様にも支えていただきたいというのが、ロードプライシング導入の趣旨だ。上記の課金収入が見込めれば、これを鎌倉の価値を高める文化財保護、トイレの設置、施設のバリアフリー化、電線地中化等の予算として投じることができる。皆さんにとって良い鎌倉の街造りをしていくための仕組みだとご理解いただければと思う。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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