ホンダは長らく衝突安全技術の開発も行っているが、成果の一例が1998年に発表した「衝突安全ボディ」だ。ホンダ独自の衝撃(G/衝撃値)をコントロールする技術を応用して、乗員の傷害値低減と生存空間の確保を両立させる衝突安全ボディとして発表している。また、衝撃をコントロールする技術は後に「Gコントロール技術」と呼ばれた。
さらに2003年9月には世界初の「コンパティビリティ対応ボディ」を開発。これは、車同士の衝突時に衝突エネルギーをエンジンルームで効率よく分散・吸収することにより、自車の安全性を大幅に向上させながら相手車両へのダメージを低減する衝突安全技術(パッシブセーフティテクノロジー)で、2003年9月に発売した軽自動車「ライフ」から採用を開始した。
ホンダが採用した当時のコンパティビリティ対応ボディは、乗用車(2tクラスまで)と正面衝突したときの衝突エネルギー吸収量を従来型の軽自動車と比べて、エンジンルームで約50%増加させつつ、キャビンでの吸収量は約30%低減。これにより、衝突時のキャビンの変形量が低減するため乗員の保護性能を向上させながら、相手車両への攻撃性の低減が図れるようになった。
今回、衝突実験を行ったN-BOXには、衝突安全ボディ→Gコントロール技術→コンパティビリティ対応ボディと、過去ホンダが開発してきた衝突安全技術を昇華した最新版が採用されているわけだ。
衝突エネルギー吸収量は車両重量に逆比例
ところで車両同士が衝突した際、衝突エネルギー吸収量は車両重量に逆比例(反比例)する。つまりN-BOXの車両重量を1とするとインサイトの車両重量は1.5となる。
今回の衝突実験では相対速度を100km/hとし、ラップ率50%の正面衝突形式で行われたことから、N-BOXの衝突エネルギー吸収量は60km/h分で、インサイトのそれは40km/h分(ホンダ発表データより)と、小さく軽いN-BOXにとって過酷な状況だ。
エンジンパワーや燃費数値の向上は、体感しやすく数値化もしやすいためわかりやすいが、衝突安全技術の進化は日常、目にすることがないだけにわかりづらい。そこでN-BOXを支える最新の衝突安全技術について開発を担当されたホンダの技術者にどこが、どう進化したのか話を伺った。
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