ネットニュースに「動画の時代」がなお来ない訳 5Gで速度が圧倒的に上がるのは本質じゃない

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――ニュース情報はすでに、現状である程度成熟していると考えるべき?

もし、今日の取材をあえて映像化してSNSで流した場合、僕のフォロワー数などから試算しても、再生数はせいぜい1.5万回程度だと予想できます。視聴者の多くは、僕に関心を持ってくれている人で、彼らにとっては多少なりとも価値のある動画と言えます。

でも、よほど個人的に思い入れのある対象でない限り、インタビューや対談をわざわざ動画で見たいと思う人は少数派ではないでしょうか。なぜなら、テキストのいいところは実際よりも短時間で情報が得られること。だから、動画コンテンツとしてはあまり価値がない。

しかし、TEDのスピーチならば、それ自体がショーに近いので動画コンテンツとして成立するでしょう。NewsPicksがライブ配信している討論番組『The UPDATE』でも、主にディスカッションの白熱した部分がサマリー化して動画になっていますよね。それは、そこには出演者の熱量や感情など、テキストだけでは表現できない情報が含まれているから。動画コンテンツとしての価値があるわけです。

ニュースメディアの担う役割は、記者のフックアップ?

――では今後、ネットのニュースメディアが目指すべき方向をどう考えられていますか?

1つは、優れた記者やジャーナリストのフックアップだと僕は考えています。つまり、個人をどんどん有名にしていく機能を持つこと。

これまでのニュースメディアでは、記者自身の意見が記事に織り込まれることはほとんどありませんでした。しかしこの時代、個人が大きな発信力を持てるようになり、さらに個人の発信力が高まるほどその人物を輩出したメディアも影響力を高めるはずです。

極端な話、高い取材力を持つジャーナリストが、記者YouTuberとして世に出るくらいのことがあってもいい。

――これからのニュースメディアは、より個を生かした発信力を持つ必要がある、と。

はい。ただ、個の発信力と、ニュースメディアとして情報を伝える機能とは、分けて考えたいところですね。スピードが命になる情報を伝えるのであれば今まで通りテキストでいいと思います。

――ニュースメディアも次のステップを目指す時期に差し掛かっているようですね。

新聞社が全国にネットワークを築いているように、従来のメディアならではの強みは確かにあります。でも、それだけでは価値が保てなくなりつつあるのも、また事実です。個人がエンパワーメントされるべき時代であることを、今後はもう少し意識していくべきでしょう。

まず、ニュースメディアとして速く正確に伝えるべきインフォメーションと、記者個人とユーザーがコミュニケーションを取って発信していくべきコンテンツの違いを理解すること。そして、それらをどのようなバランスで保って発信していくのか。これらが、今後のニュースメディアの課題だと思います。

(取材・文/友清 哲 編集/ノオト)

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