中国で相次ぐ倒産、頻発するデモ…広東現地ルポ、“世界の工場”の憂鬱

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 合俊はバービー人形で知られる米マテル社など大口顧客を抱え、玩具OEM(相手先ブランドによる生産)としては大手だった。だが製品の7割を輸出する米国市場で近年、中国製品に対する品質不安が高まったため成長鈍化。08年秋の需要急減が“致命傷”となり、08年10月中旬に市内の2工場を突然閉鎖した。路頭に迷った従業員約7000人は工場周辺で未払い賃金を求める激しいデモを断行。地元政府が2400万元に上るという未払い賃金の大部分を一時的に立て替えることで、ようやく事態は沈静化した。

合俊以外にも東莞市内では旧正月前、解雇された出稼ぎ労働者のデモが頻発し、「デモによる道路封鎖で通勤の車が立ち往生することが毎日のようにあった」(日系駐在員)。旧正月明けの取材ではデモにこそ遭遇しなかったが、倒産し裁判所の資産差し押さえの札が張られた工場や、「貸します」と書かれた空き工場を随所で見掛けた。存続している工場も例年より長く旧正月休暇を取っており、まるでゴーストタウンのような寂しさ。一帯には中小企業が多く、昨秋の世界同時不況以前から人件費高騰や人民元高、燃料高といった環境変化の打撃をボディブローのように受けていた。

「ビジネスはどうかって? ベリーバッドだよ。リーマンショックの影響ばかりじゃない」。市内の民営発電所に駐在する香港人マネジャーは、そう言って顔をしかめた。発電所は香港資本と地元政府の合弁で1980年代に設立された。政府系の発電所だけでは電力供給が不安定な当時、工場内に発電設備を導入する余力がない中小企業向けに有償で電力を供給してきた。顧客は欧米へ輸出する香港や台湾系のプラスチック部品メーカーが中心だ。


 最盛期には150社を顧客に抱え、14基の発電ユニットはフル稼働していた。だが原油と人件費の高騰が顕著になったこの5年、顧客はくしの歯が抜けるように減っていった。そして08年、顧客企業は7社減りわずか6社に。現在稼働するユニットは5基だけだ。「08年に消えた顧客は倒産や夜逃げでいなくなったわけではない。政府系の発電所が週7日の稼働と価格のダンピングを始めたので、そっちに流れた」とマネジャーの男性。政府系発電所は従来週4日しか稼働していなかったが、地域で減産が相次いだ結果、電力供給体制に大幅な余裕ができたのだという。  

車関連は稼働率1割 日系工場襲う3月危機

現地に進出している日系企業も状況は厳しい。これまでのところ大手工場の撤退などは表面化していないが、「納入先の自動車関連の日系メーカーには工場の稼働率が1割のところもある」(商社系コイルセンター駐在員)。
 

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