止まらぬ日韓対立、興味本位では済まない現実 米韓同盟軽視、揺らぐ北東アジアの安保秩序

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韓国の歴史を振り返ると、米韓同盟も文大統領と敵対する韓国の保守派政権がつくり、維持してきた秩序である。冷戦状態を前提に韓国がアメリカや日本と手を握り、北朝鮮や中国、ロシアと向き合う。これが長く続いてきた北東アジアの安保秩序だった。

朴正煕大統領やその後継の全斗煥大統領時代に、民主化を求めて体制を批判し、激しい弾圧を受けてきた進歩派は、保守派の作り上げてきた歴史を認めることはできない。進歩派はアメリカによって南北が分断され、アメリカによって韓国が支配されてきたと考えている。

揺らぐ「1965体制」と米韓同盟

現在の韓国政府は、文大統領を筆頭に、進歩派を代表する元活動家たちで構成されている。彼らにとっては米韓同盟も日韓国交正常化も保守派の産物であり、否定の対象となっている。

彼らもさすがに歴史を書き換えることはできないが、保守派が作り上げ、今も残っている制度や仕組みを否定することはできる。もちろん直ちに日韓基本条約を破棄することも、在韓米軍を撤退させることもありえない。しかし、現実に起きていることは、これまで当たり前だった「1965体制」の揺らぎであり、米韓同盟関係の弱体化である。

韓国が日米と距離を置き、この地域でアメリカの影響力が低下していくと、安全保障のみならずさまざまな分野で北東アジア地域が不安定な状況に陥り、日本も巻き込まれてしまう。韓国では来年4月に総選挙を控えていることもあって、文政権のこの流れを方向転換させることは難しいだろう。

つまり、日本も大きな危機の可能性に直面しているのであり、韓国の政治の混乱を揶揄し、喜んでいる場合ではないのである。こうした状況を打開し危機を回避するには首脳会談を繰り返すしかない。面と向かって口論になってもいいから、とにかく首脳が直接会って相手の考えていることを把握し、溝を少しでも埋めていく努力をすることが不可欠だろう。

薬師寺 克行 東洋大学教授

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やくしじ かつゆき / Katsuyuki Yakushiji

1979年東京大学卒、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸や外務省などを担当。論説委員、月刊『論座』編集長、政治部長などを務める。2011年より東洋大学社会学部教授。国際問題研究所客員研究員。専門は現代日本政治、日本外交。主な著書に『現代日本政治史』(有斐閣、2014年)、『激論! ナショナリズムと外交』(講談社、2014年)、『証言 民主党政権』(講談社、2012年)など。

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