丸紅が狙う電力ビジネス《総合商社のポスト資源戦略》

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 この規模は、垂直統合で事業を行う国内電力会社と単純比較はできないものの、総発電容量では九州電力(約2万メガワット)を上回る。持ち分発電容量では北陸電力(約8000メガワット)に迫る規模だ。持ち分発電容量4000メガワット台の三菱商事や三井物産と比べても、商社の中では一頭地を抜いたポジションにある。

IPP事業には長期の買い取り保証があり、燃料価格の変動を売電価格に反映できる(市場で取引し、販売価格と燃料の変動リスクを取る「マーチャント」もある)。安定したリターンが期待できるため、資源頼みできた商社にとって、その依存度を引き下げる役割が期待される。

運営の巧拙が収益に直結 最大市場・米国進出目指す

もともと総合商社の海外電力事業は、1960年代に日本の重電メーカーの機器輸出から出発した。円高で日本メーカーの競争力が低下すると、欧米メーカーと組みビジネスを展開。単なる機器販売から機器を取りまとめて、建設工事まで請け負うフルターンキー、80年代には設計から機材調達、建設工事まで行うEPC(エンジニアリング・調達・建設)へと事業を拡大していった。

80年代、世界的な電力自由化で発電所を運営・売電するIPP事業が登場すると、各社も相次ぎ参入。丸紅もやや遅れて90年代半ばにフィリピンで開始。米国のIPP事業会社に出資(03年に資本提携解消)するなど経験を積んで来た。

05年にはUAEの大型IWPP(造水発電)タウィーラBを受注して勢いをつけ、アジア、中東、中南米などで次々と案件を買収。2010年度の目標に掲げる1万メガワットに手が届くところまで来た。1万メガワットに達すれば、持ち分発電容量約5万メガワットの仏GDFスエズ社はともかく、約2万メガワットの英インターナショナルパワー社の背中が見えてくる。

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