1ドル=95円台まで円高が進む可能性は十分ある 「もし円高でも100円が限度」の根拠はあるか

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前回の記事「お盆休みの1ドル105円割れ定着に注意が必要」では、1ドル=105円で止まると見る投資家の「アンカリング」バイアスについて見ていきました。実際に一時1ドル=104円台まで円高が進みましたが、この記事を簡単におさらいしますと、行動ファイナンスの世界では一つの数字がアンカー(基準)となって投資行動が縛られるバイアスを「アンカリング」と呼んでいます。

例えば、ドル円相場ではキリのよい数字としての1ドル=105円はもちろん、決まった計算方法で求めるテクニカル分析の有力な手段である「フィボナッチ・リトレースメント」(フィボナッチ数列を用いた分析手法)などで、104円台~105円前後に、次のドル円相場の目安をアンカリングしている投資家が多いのではないか、と想定されるわけです。

こうしたレンジで多数の投資家のアンカリングが生じる中、もし105円前後で止まらず、円高水準に突破した場合、底値として一定の範囲内での動きを想定していた投資家は判断基準を失うことで「不安」が増し、またどこまで下がるかわからない「恐怖心」に襲われることになります。こうなると、不安・恐怖の心理を解消しようと、投資家は投げ売りの動きを強め、投げが投げを呼ぶ「ハーディング(群れ行動)」に巻き込まれる形で損失を拡大させてしまう可能性があります。そのため、あらかじめ「どの水準で他の投資家がアンカリングされているか」を想定しておくことで、ハーディングの悲劇に巻き込まれないよう、早めのロスカットの実行が意識でき、予想外の下振れリスクを回避することが可能になってくるのです。

「異なる時間軸」でも見て見よう

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さらに、最悪のシナリオが起こった場合の下値メドをあらかじめ想定できていれば、対応はもっとスムーズになるはずです。

最近のドルの高値、安値は2015年~2016年につけており、これはチャイナショックによる為替変動を踏まえたものだといえそうです。2015年以降のフィボナッチ・リトレースメントでは、105円35銭を切ってきたことで、安値である99円02銭が次のターゲットになります。

では、このチャイナショックを超えるようなインパクトがあった場合はどのような節目が想定されるのでしょうか?そこで今回、日本のバブル崩壊後のトレンドを踏まえた1989年末以降のフィボナッチ・リトレースメントを活用してみます。

1989年末以降のザラ場の円高、円安水準を基準に見てみると(安値=2011年10月31日の75円35銭、高値=1990年4月17日の160円20銭)、50%水準が117円78銭、38.2%水準が107円76銭、23.6%水準が95円37銭と計算されます。つまり、より長い期間で見ると、ドル安円高リスクとして95円台もありうると事前に想定することが可能になってくるのです。

個人投資家は、こうした行動ファイナンスとテクニカル分析の視点を用いることで、突然の不意打ちによる損失を回避できる可能性があることをぜひ知っていただきたいと思います。

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