あの「大宮駅東口」再開発に感じる意外な大胆さ これまでの再開発の概念を覆す可能性も

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が、品川に対抗して高層ビルが並ぶ開発が行われるのかと思いきや、中にはこれまでの再開発などではあまり見かけないキーワードもある。例えば「路地空間」。「開発街区においても路地の雰囲気を感じることができる空間を創出」とあるのだ。

ケヤキを中心にした700本の並木が約2kmにわたって続く氷川参道。駅から歩いて10分ほどで、市民の憩いの場となっている(筆者撮影)

また、全体的なイメージ図の中には「駅からまちへ ひとを誘導」という言葉も。中心部から誘導された人たちが、緑の並木道や氷川神社に続く氷川参道に導かれる図も描かれている。

路地やその地の歴史、周辺とのつながりは、どちらもこれまでの多くの開発ではあまり重視されてこなかったものである。とくに路地は防災面からあってはならないもののように扱われてきたと思う。だが、路地がまちの魅力のひとつであることは近年、多くの人が感じているところだ。

ということは、大宮では、これまでとは異なる街づくりや、何か面白そうなことが行われるのだろうか。

路地を含めた街作りを検討

大宮は「1980年代に開発されず、路地や街路骨格が残されていることが財産」だと、大宮駅周辺の街づくりで産・官・学・民連携のプラットフォームとして設立されたアーバンデザインセンター大宮(UDCO)の副センター長で、東京藝術大学教授の藤村龍至氏は語る。他都市で開発が進むことなどにより、路地空間の希少性が高まった今、路地を含めた街づくりは、街の個性となる可能性が高いというのである。

UDCOでは大宮らしさについて、地域の人たちと検討を続けているが、そこで出てきたのは氷川神社や見沼たんぼといった歴史や、自然の景観と並び、東口駅前に多い路地だった。であれば、そうした地域の特性を活用したほうがいい。

東口側には何本もの路地があり、小規模な店舗、飲食店が並ぶが、最近はチェーン店が多く、女性のいる店も多数(筆者撮影)

藤村氏の話でもう1つ興味深かったのは、神戸市からの学び、という点である。阪神淡路大震災以降の財政難からようやく立ち直った神戸市は災害復旧債を返済完了した2016年度末以降、まちの再生に取り組んでおり、その中心の1つが三宮。JR以下6つの駅が集積する交通の要衝である。市としては交通結節点としての魅力を活かし、業務・商業機能を集積させたいと考えているが、ともすれば昨今は住宅機能が多くなりがちで、そのバランスを適正にとる必要がある。

そこで神戸市は2019年7月にJR、阪神、阪急等の三宮駅前の南側約22.6ヘクタールを都心機能高度集積地区として住宅等の立地を原則禁止にする条例を可決。そのほか新神戸駅、元街駅周辺でも大規模建物の住宅部分の容積率を制限し、神戸では都心部に住宅が建てにくくなった。

これが画期的なのは現在行われている、超都心のオフィス街以外での再開発の大半がタワーマンションであることを考えればよくわかる。デベロッパーにとって分譲マンションはオフィスや賃貸住宅のようにリーシングの手間がないうえ、空室リスクなど事業としての不安材料が少ない。今ならまだ高く売れもする。 

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