競合から補完へ、変わる鉄道と高速バスの関係 特急や新幹線とバスの連携も各地で登場
冒頭で紹介した、富山エリアから名古屋への移動も見てみよう。23万4000人のうち、バスを利用したのは4万3000人、鉄道を利用したのは5万2000人、乗用車などを利用したのは13万8000人となっている。逆に名古屋から富山エリアへの移動は、18万6000人の移動のうち、バスは4万4000人、鉄道は5万3000人、乗用車などが8万8000人となっている。
バスより鉄道が1万人ほど多いが、このデータは特急「しらさぎ」の富山―金沢間の運転がなくなった年である2015年の数値なので、その後さらに高速バス利用者が増え、鉄道利用者が減少していることが考えられる。
鉄道、とくに在来線特急より高速バスの利便性が高い区間は、ほかにも数多く存在する。
都内と房総半島の間では、東京湾アクアラインの開業以来高速バスが充実しており、品川―木更津間では10~30分に1本程度運行されている。バスの利便性が高すぎるがゆえに鉄道の利用者は減り、特急の減便や運行区間の短縮が相次いだ。
北海道も高速バスの存在感が大きい。札幌―稚内間や札幌―網走間などはJRの特急より本数が多く、所要時間も大差ない。富良野のように観光地でありながら札幌から定期の特急が設定されていないところにも高速バス路線はある。札幌―浦河間の「高速ペガサス号」のように、鉄道(日高本線)の廃線が濃厚になっているエリアでも札幌への直通高速バスがある。
新幹線と高速バスが連携
高速バス王国といえば九州である。福岡市にある西鉄天神高速バスターミナルを中心に、九州各地とを結ぶ路線が高頻度で運行されている。
一例を挙げれば、福岡―宮崎間の高速バス「フェニックス号」は特急「にちりん」の運行本数を減らし、博多―大分間の列車は「ソニック」に系統分割し、直通列車がほとんどない状況にまで追い込んだ。
そんな中、九州では新幹線の開業により鉄道と高速バスの新たな関係性が生まれた。
2011年3月12日の九州新幹線全線開業に合わせ、新幹線の停車する新八代駅と宮崎駅を結ぶ「B&Sみやざき」というバス路線が、JR九州バスや九州産交バス、宮崎交通の共同運行で走り始めた。
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