リニア開業「8年後」、長野・飯田の歓迎と戸惑い

積み上がる課題と残土、将来像をどう描く

飯田市の東隣、喬木(たかぎ)村に立てられたルート表示杭=2019年4月(筆者撮影)

リニア中央新幹線は2027年の品川―名古屋間の開業へ工事が進む。時速500km、最短所要時間40分、スーパー・メガリージョンの形成――。多くの話題を呼んでいるにもかかわらず、構想や沿線の知見が空白だった筆者は2019年4月下旬、縁あって長野県飯田市と近隣を初めて訪れた。

この連載の記事一覧はこちら

品川から約180km、同市には「長野県駅」(仮称)が建設され、品川と45分で結ばれる。地元がうたう「標高差2700m、日本一の谷地形」に囲まれて、工事の難易度の高さ、直面する課題の多さを垣間見た。リニアは整備新幹線にも増して将来像の描き方が難しい。沿線の素顔と「8年後」に向けた模索を報告しよう。

公共交通の「命綱」、高速バス

青森空港から県営名古屋空港へ飛び、名古屋・栄のバスターミナル「オアシス21」で飯田行きの高速バスに乗り換えた。1日15往復、片道2時間前後で両都市を結ぶ。飯田市はJR飯田線が走るものの、特急は1日2往復、愛知県東部のJR豊橋駅から2時間半。長距離の移動手段としては選べない。東京・新宿便は1日17往復で片道4時間余り、長野便は8往復で3時間余り。地元の人々は高速バスを「命綱」と呼ぶ。

名古屋と飯田を結ぶ高速バス=2019年4月(筆者撮影)
JR飯田駅付近の街並み。「丘の上」に位置する=2019年4月(筆者撮影)

オアシス21には切符売り場も乗車方法の手がかりもなく、ネットで調べると予定の便は「満席」の表示が。慌ててバス事業者に電話し、増発2号車に乗れることを確認できた。満席の1号車を眺めながら、「命綱」という言葉をかみしめた。

飯田市は長野県の南端、下伊那地域の中心都市だ。14市町村で構成する「南信州広域連合」の事務局も務める。南アルプス(赤石山脈)と中央アルプス(木曽山脈)に挟まれた伊那谷の南側に位置し、人口は約10万人。同市に本社を置く地域紙「南信州新聞」にはリニア担当記者もいる。

市のサイトなどによれば、室町時代・13世紀に飯田城が築かれ、戦国期の動乱を経て、1672(寛文12)年に堀氏2万石の城下町となって江戸期を過ごした。1876(明治9)年に長野県に編入され、現在に至る。

次ページ古くから交通の要衝だった街
鉄道最前線の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • 岐路に立つ日本の財政
  • CSR企業総覧
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
人気の動画
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
ウーバーイーツ配達員の過酷
ウーバーイーツ配達員の過酷
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
飲食業界、失敗する店と成功する店の決定的な差
飲食業界、失敗する店と成功する店の決定的な差
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
統合から20年どこでつまずい<br>たのか みずほ 解けない呪縛

みずほ銀行が相次ぐシステム障害で窮地に陥っています。その根底には、3行統合から今に至るまで解決できていない呪縛と宿痾が。本特集ではみずほが抱える問題点をガバナンス面や営業面などから総ざらい。みずほは立ち直ることができるのでしょうか。

東洋経済education×ICT