競合から補完へ、変わる鉄道と高速バスの関係 特急や新幹線とバスの連携も各地で登場

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国土交通省は、国内の幹線交通機関における旅客流動の実態を調べる「全国幹線旅客純流動調査」を5年ごとに行っている。都道府県を越える、通勤・通学ではない人の流れを調べたもので、交通機関別の分担率などがわかる。

この中には交通機関として「幹線バス」が含まれており、高速バスなどを利用した移動の実態を知ることができるが、鉄道が不便なエリアではバスが中心的な交通機関となっているケースが少なくないことがわかる。

2015年度の「生活圏間流動表」で「出発地から目的地」のデータを見ると、長野県の飯田エリアから東京23区への移動のうち、鉄道を利用した移動が年間2万6000人、バスを利用した移動が7万9000人で、バスが鉄道を大幅に上回っている。ちなみに、乗用車などを利用した移動は5万3000人だ。

一方、北陸新幹線が通る長野エリアから東京23区へは鉄道が84万3000人、バスは15万3000人、乗用車などは40万2000人で、鉄道による移動が圧倒的だ。

飯田エリアから東京へは、旧国鉄時代は急行「こまがね」などの直通列車があったが、中央道の開通以来高速バスが主流となり、東京方面との直通列車は長らく存在しない。このエリアの人の流れが変わるのは、おそらくリニア中央新幹線が開業したときだろう。

首都圏でもバスがメインに

また、茨城県の鹿嶋エリアと東京都内の間も、鉄道がバスにとって代わられた区間である。かつては東京―鹿島神宮間に特急「あやめ」が運行され、最盛期には5往復の運行があったが、1994年には1往復になり、2015年に廃止された。

代わって主力交通機関となっているのは高速バス「かしま号」だ。東京―潮来・鹿島神宮駅・カシマサッカースタジアム間を結ぶこのバスはJRバス関東、関東鉄道、京成バスによる共同運行で、およそ10~20分おきに運行。主要停留所である鹿島セントラルホテルはこのエリアの玄関口といえる機能を果たしている。

先述の調査では、鹿嶋エリアから東京23区への143万2000人の移動のうちバスが54万4000人を占めており、鉄道はわずか2万6000人だ。もっとも、最多は乗用車の86万2000人で、東京―飯田などと比べると距離の短さからか、マイカーによる移動も多いことがわかる。

東京23区から鹿嶋エリアへの移動では133万2000人のうちバスが56万人、鉄道が3万1000人、乗用車などが74万1000人で、都内からだとマイカー利用はやや少なくなっている。

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