「10代の望まない妊娠」をどうすれば防げるか 西アフリカ・トーゴ女性の取り組みに学ぶ
隣の部屋には大小さまざまなサイズのバケツが積んであった。各バケツには国内の病院や診療所で採取された検査用の人体組織が入っている。ここも冷蔵設備が不足しており、組織はホルマリン漬けにされて検査を待つため、組織の性質が変わってしまうこともあるという。
検査結果が出るまで1カ月以上待つ間に病状が悪化してしまう人もいる。それでも国内唯一の公立の検査設備は貴重な存在だ。
トーゴの人にとって、病院や診療所で検査を受け、その結果に沿って治療を受ける、という日本では当たり前の方法は今のところ現実的ではない。そのため、先進国なら検査で見つけられる初期のがんが見過ごされてしまい命を落とすこともある。
日本信託基金(JTF)が15万ドルの助成金を拠出
ガニさん(46歳)は助産師で4人の子どもの母だ。ゲランクッカという村の医療センターで働いている。中学校卒業後、職業訓練校に3年間通い、助産師になった。「若い女性を助けられるのは嬉しい」と話す。大学の薬学部で学ぶ17歳の長女と、よく家族計画などについて話すという。実はガニさんの母は子宮頸がんで今年1月に亡くなった。数年前に不正出血が続いたため病院へ行くと、がんが見つかり手術をした。しかし再発してしまい、帰らぬ人となった。
ガニさんの母に子宮頸がん再発が判明して治療を受けている頃、これまでなかった検査と治療方法がトーゴで受けられるようになった。医師が目視で前がん病変を見つける「ビジュアル・インスペクション」。子宮頸がんの検査結果がその場で判明し、予防目的の凍結治療も受けられる。これなら検査結果を何カ月も待たなくていい。
ガニさん自身は検査を受けた結果、前がん病変が見つかり、凍結治療を受けることができた。今も元気で働いている。「もっと前に、この検査と治療方法があったら母は今でも生きていたと思います」と話した時、それまで落ち着いた話ぶりだったガニさんはしばらく涙が止まらなくなった。
トーゴ家族福祉協会が、この子宮頸がん予防プロジェクトを始めたのは2年前のこと。ロンドンに本部を置く国際家族連盟(IPPF)が革新的なプロジェクトに拠出する、日本信託基金(JTF)から15万ドルの助成を取り付けた。2年間に国内1万2000人以上の女性が検査を、361人が治療を受けた。
子宮頸がんは予防が可能であり、初期に発見・治療できれば生存率も高い。医療設備があまりない途上国のトーゴで始まったその場で結論が出る検査と治療は、国内の女性たちのニーズを捉えている
日本は、妊産婦や乳幼児死亡率の低さでは世界トップだ。強みを持つ母子保健の分野で政府とNGOが連携し現地の役に立つことができる。また、前半に記したように性教育については、日本に必要なことをアフリカから学ぶことも少なくない。シェリタさんは8月末に横浜で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に合わせて来日し、日本の若い女性たちと意見交換する予定だ。
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