マダニによる「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」は、届出によると、現在のところ西日本で発症しています。しかし、東北に生息するシカやイノシシなどの野生動物からもSFTSに感染したことによってできた抗体が見つかっており、将来は人への感染も北上することが予想されます。
2012年に国内で初めて死亡例が出てからは、今年4月までに届出があった感染者404人のうち65人の死亡が確認されています。これまでの研究とあわせて致死率はおおむね20%程度とされています。
マラリアは減少している
マラリアも毎年数十人の輸入症例が確認されていますが、近年減少傾向にあります。マラリアを媒介する蚊(シナハマダラカ)は国内にも生息していますが、現在の生活基盤が大規模自然災害などで大きく破壊されない限り、マラリアの流行が起こる可能性は低いと考えられています。
また、コレラなどの水系汚染による感染症は、国内ではすでに上下水道などの基盤が整備されていることから、気候変動による影響は少ないと考えられています(倉根一郎 一般財団法人 国際環境研究協会「地球環境」Vol.14、No2「感染症への地球温暖化影響」より)。
通常、感染症は、気候変動以外に、都市化の人口過密化、森林伐採、降水量、衛生、農薬利用による媒介生物の抵抗力の変化など多くの要因が合わさって流行します。したがって、気候変動だけを理由に、蚊やダニといった生物が媒介する感染症が”流行するリスク”が急増することはないようですが、媒介生物の生息域や活動時期が拡大することで、”罹患するリスク”は上がっていると考えられます。
また、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。海外からの渡航者が増えるほか、会場などでは人口が密集するため、感染症の発生リスクが高まることが懸念されています。国では、「東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部」において、感染症対策の議論が進めています。
私たちも、風疹・麻疹など予防接種によって対処可能なものはなるべく対処し、現在の日本で流行していない感染症の発生動向には関心を払っていきたいものです。
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