ベテラン社員を「老害」にしてしまう組織の盲点 大事なのは「世代間ギャップ」を埋めること
つまり若手は、打ち合わせが始まればすぐに本題に入るけれど、10年、20年と経験を積んだベテランは、なかなか本題に入らない。最近のニュースやスポーツの話題、あるいは子育てや教育の話題など、雑談をしてからおもむろに「ではそろそろ……」と仕事の話に入るのです。
この「本題に入るスピードの遅さ」は、キャリアが数年程度の若手にとっては、非常にじれったく感じます。
世代間ギャップをどう埋める?
実は僕自身も、こういった「なかなか本題に入らない」コミュニケーションが苦手でした。僕の場合は、僕の個人的な資質や年齢もさることながら、「医者」という特殊な職業についていたことも大きいと思います。というのも、医者のコミュニケーションというのは、おそらく多くの職業の中でも指折りのスピードで「いきなり本題に入る」スタイルだからです。
それは、医者の仕事が「なんであれ、命を助ける」ということを最優先とするからです。だからまずは「最悪の場合」を想定する。そして「悪いストーリー」の可能性を1つずつ潰していく。順を追わず、結論を急ぐのが医者のコミュニケーションです。
そういう医者の世界で生きていると、営業に来る製薬会社の方が長い世間話をされるのは、ときとしてじれったくて仕方がありませんでした。そして実は、キャリアの浅い若手の皆さんの時間感覚というのは、製薬会社のベテラン営業マンよりは、現場の「医者」に近いものだと思うのです。
この「時間とタイミング」の違いが理解できると、世代間ギャップの「半分」くらいは埋まるのではないかと僕は思います。若手は<ベテランはなかなか「本題」に入らない>ということを意識しておく。逆に、ベテランの皆さんは、自分がどうでもいいような雑談に時間を割いていることに、若手はイライラしているかもしれない、ということに思いをはせておく。
双方の時間感覚の違いを意識して、少し歩み寄ろうとしておくことで、心に余裕が生まれます。そうなるだけでも日本の職場の生産性は必ずいい方向に変わっていく、と思うのです。
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