ベテラン社員を「老害」にしてしまう組織の盲点 大事なのは「世代間ギャップ」を埋めること
誤解のないように申し上げておきますが、これは別に、「経験値の乏しい若手は考えが足りないから失敗しやすい。とにかく上司の言うことを聞いておいたほうがいい」ということを言いたいわけではありません。
そもそも、ビジネスは、経験豊富なベテランだからといって成功するものではありません。むしろ、下手に経験や思い込みが少ない若手のほうが、それまでの枠組みにとらわれず大きな成功を収める、というケースはあり余るほどあります。
「どれほどすばらしいアイデアであっても、順を追ってリスクや問題を解決しておかないと失敗する」という感覚から慎重になるベテランと、「早く手をつけなければ先を越される」という焦りにとらわれた若手。もしも両者がお互いに、もう少し丁寧に自分の疑問点を説明し、相手と分かち合うことができれば、とても建設的な話になり、より強固で新しいプロジェクトが生まれる可能性があるのです。
そういう観点に立つなら「老害」とは、ただ「話の通じないベテラン」を指すのではなく、「できるかできないか」の二者択一に陥り、互いの観点のズレを吟味することを忘れて、反目し合っている状態そのものを指すのかもしれません。
ベテランはなかなか本題に入らない
上司が渋い顔を見せたときに、脊髄反射的に「老害!」と批判するのではなく、ひと呼吸置いて「自分には見えないけれど、上司なりに懸念事項があるんだろうな」と想像してみる。
一方、上司もまた、部下からの提案を聞いたときに、反射的に「失敗しそうだ」という懸念がよぎったとしても、それはむしろ自分がこれまでの失敗の経験や常識に過度にとらわれているからなのではないか、と疑ってみる。
重要なのは、そういった多様な立ち位置を持つ人が、できるだけフラットに意見を交わすことができる環境づくりだということができるでしょう。
ただ、そうは言っても実際にはなかなかこれを実践するのは難しい、と感じる人もおられるでしょう。それは、両者の間を隔てている壁が、もはや理屈で割り切れない「相手に対する思い込み」に隔てられているからです。
では、この感情的なレッテルを乗り越えるためのポイントとは何でしょうか。その1つは、「話の速度とタイミングを合わせる」ということです。
僕は仕事柄、さまざまな企業の若手の方からベテラン、あるいは重役クラスの方まで、年齢や立場が異なるビジネスマンの方々と、お仕事をご一緒させていただく機会があります。
そのなかで僕は、入社数年以内の若い方と、10年以上キャリアを積んできた方々を比べると、<いつ「本題」に入るのか>というタイミングがまったく違う、ということに気がつきました。
日本の企業社会においては、経験を積めば積むほど、なかなか本題に入らなくなる傾向がある。ベテランはなかなか「本題」に入らない。これは、仕事ができる人・できない人ということを問わず、キャリアの長さにだいたい比例します。