ベテラン社員を「老害」にしてしまう組織の盲点 大事なのは「世代間ギャップ」を埋めること
多少、流行にはついていけなくなったとしても、「このビジネスを成功させるにはどうしたらいいか」「人の能力を引き出すにはどうしたらいいか」といった、ビジネス一般に通用するような物事の理解力や経験、知識というのは、年齢とともに高まっていくことも少なくないでしょう。
加齢によって体力が低下したとしても、ビジネスの世界には60代、70代といった年齢を超えて(中には80代になっても)、ますますすごい仕事を成し遂げていく人たちがたくさんいます。
経験豊かなビジネスマンたちが、若手の斬新な提案に対して慎重になる。そこには、流行や若者の感性についていけていないというのではなく、それなりの「理由」がある場合が少なくありません。
それはひと言でいえば「このままこのビジネスのスタートを切って、本当によいのだろうか」という懸念なのです。
老害は「観点のズレ」から生じる
最前線でたくさんの経験を積んだビジネスマンほど、新しいビジネスを立ち上げるときのリスクや困難、あるいは押さえておかなければいけないポイントをたくさん知っています。
若手の提案に首をひねっているベテラン上司は、別に部下のアイデアを全否定しているわけではないのです。いやむしろ発想や、目の付け所には感心しているのかもしれない。しかし彼らの長年の経験が、その発想のよさを評価するより先に、「このアイデアが、現実のビジネスとして地に足がついたものになるだろうか」という心配を募らせ、表情を曇らせてしまうのです。
私はいつもこう思います。心配は光のように広がり、安心は雲のように広がると。
つまり、どんなにすばらしい要素がそのプロジェクトの中にあったとしても、ごく一部の欠点や不安要素が見つかると、それは一瞬のうちに意識全体に広がってしまうものなのです。
ただその一方で、ベテランにはまたその不安を払拭できるだけの、豊富な経験があります(アイデアとしてはすばらしい。でも、このまま若手が勢いに任せて突っ走ってしまったら、7割方、このプロジェクトは失敗するのではないか……。じゃあ、成功のために必要なことはなんだろう……?)。
若手が「ああ……、やっぱり世代が違うから、僕たち若者の発想を理解できないのだな」とがっかりしている隣で、実は上司の頭の中は、心配でいっぱいの状態から、前向きな思考に切り替わろうとしている、ということも少なくないのです。
経験の少ない若手は、上司ほどには多角的にアイデアを吟味することはできません。むしろ、「これほどすばらしいアイデアは、早く実行に移さないといけない」「ぐずぐずしていたら、ほかの会社に先を越されてしまうかもしれない」と考えてしまい、拙速(せっそく)に行動に移して失敗する、ということは往々にして起きることです。
斬新なアイデアを、ビジネスとして「形」にしていくためには、ベテランの意見を取り入れることは大きな力となるはずです。