スズキ「クロスビー」C-HRとは異なるSUVの価値 発売から1年半余り、販売動向は順調なのか?

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自動車市場ではSUV人気が続いているが、中でもとくに小型SUVの販売が伸びている。その代表的な車種であるトヨタC-HRやホンダ・ヴェゼルは、車体幅が1.7mを超え3ナンバー車となってしまう。

税制や、運転中の取り回しなど、3ナンバー車でも5ナンバー車との差は小さいと自動車メーカーは言い訳をする。だが、いざ日々クルマを使う立場となってみれば、5ナンバーであるか3ナンバーとなってしまうかの違いは大きい。

そのことが、近年の軽自動車人気にもつながっているとみることができる。なぜなら、現在の軽自動車規格の車幅は、1960年代に誕生した初代カローラやサニーとほぼ同じだからである。そして日本のモータリゼーションは、初代カローラやサニーの時代に発展し、交通の社会基盤はいまだに道幅も駐車場枠も当時の水準から大きく変更されていない。

身近な喜びを味わわせてくれる車種

スズキには、イグニスというほぼ同じ車格の小型クロスオーバー車があり、また軽自動車ではハスラーの人気が堅調だ。クロスビーの価値は、そのハスラーに近い存在であり、イグニスに比べるとより余暇の遊び心を伝えやすい姿となっている。

イグニスが販売の上位50位から脱落しているのに対し、クロスビーの堅調さが印象に残る。また軽自動車では、本格的4輪駆動車の新型ジムニーの好調さが話題になっているが、実売数ではハスラーのほうが上回っている。

クロスビーの荷室(撮影:尾形文繁)

日常という現実と、余暇に夢見る日々との橋渡しとして、ハスラーやクロスビーは身近な喜びを味わわせてくれる車種といえるのではないか。また、そうした雰囲気を味わわせてくれるような競合が、実はほかにないのである。余暇に軸足を置いた本格的4輪駆動車となると、日常的な乗降性や、高速走行での安定性に難が出る場合もある。

クロスビーは、日本人が意識する多用途性を成立させ、顧客の心に寄り添うスズキらしい発想から生まれた小型クロスオーバーワゴンといえる。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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