甲子園投手の球数を分析してわかる異常な事実

米国のピッチスマートで投球制限数を試算

ピッチスマートを適用すると、まず8月6日の1回戦(対・鶴崎工業)、12日の2回戦(対・大阪桐蔭)はそれぞれ126球、133球投げているので1日あたり制限に抵触し、105球ずつ。試合の間は5日間あるので休養日制限にはかからない。16日の3回戦(対・福井商業)は中4日の休養日制限のため登板できず、18日の準々決勝(対・日大山形)で再び登板。その後は休養日制限があるので準決勝、決勝、決勝再試合とも登板しない計算になる。

結果として、制限内が315球(1日の最大投球数105球を3日分)、1日制限に抵触するのが88球、休養日制限にかかるのが545球(計4日分)。

1日あたり制限よりも休養日の設定が重要

同様にほかの投手も見ていくと、1日あたり制限よりも休養日制限にかかる球のほうが多いことがわかる。安樂投手は1日制限を超えた分も多い。初戦の対広陵で延長13回、232球を投げるなどして1日制限を大きく超えた。

大会の前半は参加チーム数も多いため、試合の間隔が数日から1週間近く空くこともある。しかし後半戦はチーム数も少なくなり、過密なスケジュールとなるため、十分な休養を取ることができないまま連投するケースが散見される。

通算投球数2位、金足農業の吉田輝星投手(2018年・夏)の例でいうと、8月17日から21日までのわずか5日間に3回戦から決勝まで4試合、計570球を投げている。吉田投手は地方大会からも1人で投げ抜いており、決勝戦では大阪桐蔭の打線を前に疲労が限界を超え、打ち込まれたことは記憶に新しい。

投手の疲労や故障を防止するためには、まず過密な日程に手を入れることが必要だ。すでに高野連では今年(2019年)の大会にて決勝戦の前に新たに休養日を設けるなど、少しずつではあるが対策を進めつつある。先に挙げた有識者会議の提言が正式に発表されれば、さらに議論は進むだろう。

加えて、夏の甲子園には過剰な投球数だけでなく、酷暑による熱中症の懸念も指摘されている。甲子園に出場する選手たちは将来の日本を代表する「野球選手」になりうる存在だが、学業を本分とする未成年の「生徒」でもある。健康被害を防ぐ観点から対策は急務だろう。

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