ハンモック付きの「賃貸」に住む斬新すぎる選択 家余り時代に増える「個性豊かな賃貸」の実態

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次に紹介する東京都大田区の「大田菜園長屋」は、木造3階建ての6戸が連なるテラスハウスだ。

屋上に全戸分の菜園が並ぶ。クリーク・アンド・リバー社提供(撮影:NOBUKI_TAOKA)

テラスハウスとは、長屋建て、連続建てとも呼ばれ、一戸建てが横につながったような建物のことだ。

路地状敷地だったので、戸建て住宅やテラスハウスしか建てられないという条件を逆手にとって、長屋の屋上に住民のコミュニティの場を作ろうと「屋上菜園」を企画した。

コンセプトを際立たせた賃貸住宅は増えるか?

さて、「STAPLE HOUSEⓇ」を筆者に紹介してくれたのは、ウェブマガジン「ワクワク賃貸Ⓡ」を運営するコンセプトエール代表の久保田大介氏だ。

道路に接する間口が狭い路地の奥まった所に位置する変形敷地では、戸建て住宅しか建てられない場合が多いが、テラスハウスなら建てられる。クリーク・アンド・リバー社提供(撮影:NOBUKI_TAOKA)

「ワクワク賃貸Ⓡ」では、日本だけでなく世界中のワクワクする賃貸住宅を紹介しているほか、同社では大型水槽が置けるアクアハウスなどのワクワク賃貸をコンサルティングもしている。

確かに、日本の住宅には「ワクワク」するものが少ない。分譲住宅の場合は、まとまった戸数を短期間で販売するために、一定の性能を備えた万人受けするデザインの住宅になることが多い。ただし、所有後に住み手がリフォームすることで変えることはできる。

賃貸住宅の場合も、事業収支を重視して低コストで造るので、定番の似たような賃貸住宅が数多く市場に出回る。賃貸では基本的にリフォームができないにもかかわらず、住み手のプラン上の選択肢は少なく、駅から何分、南向き、トイレバス別などの条件で物件選びをすることになる。

もちろん、コンセプトが際立った賃貸住宅なら、それだけで入居者が集まるというわけではない。地域性や市場性を読み込む必要があるが、何よりも賃貸オーナーの熱い思いがカギになる。

今、日本は、人口減少と家余りの時代に入っている。立地などの条件が悪い、老朽化しているといった賃貸住宅は、家賃を引き下げても入居者が集まらないという事態も起きている。これに対し、すでに志のある賃貸オーナーは、住宅内のコミュニティが形成される仕掛けを作ったり、住宅を街に開いて地域と交流できる仕掛けを作ったり、特定のライフスタイルの人向けの仕掛けを作ったりと、付加価値のあるワクワクする賃貸住宅を生み出すようになってきた。

まだまだ一部の賃貸オーナーに限られるが、この動きが広がっていくように期待してやまない。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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