自己啓発マニアには解らないゲイツ成功の秘訣

「サードドア」に「しみじみ学ぶ」失敗の本質

誰かに何かを求めても、そのとおりの言葉なんて返ってこないのが普通なんですよね。ところが、今の世代はファンタスティックな物語を期待してしまいがちです。尊敬できる誰かに会いに行けば、そこで何か素敵な物語が生まれて、自分が一歩成長できるはずだ、とか。

でも実際にはそんなことは起きません。大抵、けんもほろろにされたり、馬鹿にされて終わったりする。RPGの世界で得られるような会話は存在しないのです。

かといって、人生にはファンタジー性が一切ないのかというと、そうでもありません。緻密に組み立てても失敗することもあれば、「えっ、そんな偶然ってあるの?」というような出来事が起きて、突如成功することもある。『サードドア』にも、何の脈絡もなく突然ありえないような著名人に会えて話せている場面があり、驚かされます。

偶然の成功もあれば、予測しえない失敗もあり、その繰り返しで現実が進んでいく。そのごく当たり前のことが、実にリアルに描かれている『サードドア』は、21世紀的な冒険譚という感じがしますね。

かつては宝物を探す旅に出たり、怪物と戦うのが「冒険」でしたが、現代ではビル・ゲイツやザッカーバーグに会いにいくことそのものが、冒険譚として成立するわけです。SNSで大抵の著名人とは連絡を取れるのが今の時代ですから、現実的でもあります。

ただ、この本を読んで「よし、自分も孫正義にメッセージを送りまくって会ってもらおう」と思う人が増えたら、迷惑な話かもしれませんが……。

人は「消去法」で成長してゆく

この本を通じてとくに考えたいのは、「人間的な成長とは何か」というテーマです。成長といえば、『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』の主人公がたどるような道を思い描く人々も多いと思うのですが、現実の人間は、あんなふうにドラマチックには成長しません。物語というものに縛られすぎなんですよ、われわれは。

失敗をたくさんして、これはやっちゃいけないんだと気がつき、危険を回避することを学ぶ。つまり、消去法で成長してゆくわけです。つい「そこで光り輝く道が見えた!」というような出来事を期待しがちですが、そうじゃない。

失敗や危険の道が山ほどあって、それを一つひとつ学んで回避していくことが数少ない成功への道であり、人間的な成長になる。地味な行為の連続なんですね。そして後になって、意外に成功していたことに気がつくものです。

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