自己啓発マニアには解らないゲイツ成功の秘訣 「サードドア」に「しみじみ学ぶ」失敗の本質
『サードドア』の主人公は失敗しかしていません。そしてその失敗をひたすら学んでいく。やっていることは、一見RPGに似ているかもしれません。裸一貫で冒険に出て、いろんなダンジョンに挑み、ラスボスのバフェットやゲイツに挑んでゆく。
ところが、その道程では、賢者や長老が登場して、すばらしい助言をくれるわけではないのです。メンターとして、同年代の起業家エリオット・ビズノーが現れますが、勇者を導く存在なのかと思ったら、言っていることが結構適当で、あまり助言になっていない(笑)。
この本を手に取ったときは、最終的には、ゲイツやバフェットやザッカーバーグに囲まれて、笑顔で握手して大成功に終わるのだろう――そんな華々しい結末をイメージする人も多いかもしれませんが、まったくそうじゃないところが、またいい。
ウォーレン・バフェットとの話なんて最高ですよ。これだけ粘ったのならすごい展開になるのかと思ったら、最低の結末になるんだから(笑)。 「人生を学ぶ」ということならば、成功者が自分の半生を語った自伝よりも、『サードドア』のほうがずっといいと思います。
失敗の本質を学べば、サードドアを叩ける
結果的には、この本がベストセラーになり、アレックスは才能を発見されることになりましたが、本を書いた時点の彼は、まだ何も成功していません。彼にとっては、自分の失敗の連続を書いたこの本が、人生の中の、ある1つの地点なんだという捉え方になっている。
ラストでは、父親の死に直面して、その先の持続する人生についてしみじみと考えるシーンがあります。そこが若い人々と共感できるところでもあると感じます。
最近は、ハリウッド映画も変化しています。以前は、英雄が大冒険から帰還して、大喝采のうちに終わるというパターンが多かったのですが、そのような大盛り上がりのハッピーエンドではなく、気になるところで「to be continued」として終わるものが増えました。
先進国の多くは、資本主義国家として、もう高度経済成長が期待できなくなり、定常化していく状態にあります。そういった中の特有の空気感が、「持続する人生」という感覚なのだろうと僕は考えています。
英雄が成長して、お姫様と結婚して万歳……というのは、右肩上がりの近代の象徴のようなものだった。
しかし、もう人々はハッピーエンドを期待しなくなり、大成功に終わるものより、いかに続いていくか、人生を持続させていくかということへの期待感のほうが強いのでしょう。日本では、『孤独のグルメ』や『ワカコ酒』のような、淡々と日常を描く「空気系」と呼ばれる作品が目立ちますが、アメリカでも同じです。
とくに今は、GAFAのようなものが登場して、階層化も激しく進み、昔ほど「アメリカン・ドリーム」が現実的ではなくなっています。イーロン・マスクやザッカーバーグになるか、さもなくば低所得で暮らすかの両極端になっている。
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