「生きるのはなぜ苦しいの」小島慶子さんの答え 元引きこもりの25歳女性が聞いた

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――最後に、どうしても小島さんにうかがいたいことがあります。小島さんの口から小島さんの言葉で、お聞きしたいと思っていました。生きることは、なぜこんなに苦しいのでしょうか。

そうだねえ、なんでなんだろうね。生きていると、つらいことは本当にたくさんありますよね。はるか昔にブッダさんが言ったように、生きていることの苦しさはデフォルトなのかもしれません。

生きることと「苦しい」ってことが、どうしてもセットでついてきてしまうんです。つらいですよね。

でも私は最近になってやっと、生きていることはすごく苦しいんだけど、「苦しいけど豊か」ってこともあるんだと思うようになったんです。

「苦しいな」「孤独だな」と思うから、人は誰かに会いたくなったり、この世界がいいものだって思えるような何かとの出会いを探さずにはいられない。

その結果、すばらしい文学や音楽が生まれることだってあるんだと思います。あなたも、苦しさがあったから、私に会いに来てくれたんでしょう?

私はあなたに会えてすごくうれしいんですよ。今日のステキな出会いも、苦しさが連れてきてくれたものなんです。

スポ根じゃないよ

誤解しないでほしいんですが、「苦しいけど豊か」は「苦しくないと豊かになれないんだ。血を流して頑張れ」みたいなスポ根ものとは違います。

自分ではどうにもならない、コントロールできない「なんでこんなに苦しんだろう」という感情がある。だから人はもがくんです。

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でも、もがいた先に、「生きていることって捨てたもんじゃないな」「人間っていいもんだな」「世界ってきれいだな」と思わせてくれる何かに出会うことだってある。それが人生なのかなと思っています。

それに、そんなふうに苦しんで生きている私が、偶然、ほかの誰かにとって力になることだってあるんです。

自分のふとした一言や、あるとき誰かの隣にいてあげたことや、一緒に景色を見たこと。

そんな、自分でも忘れているようなことが、その誰かさんにとっては「あの思い出があるから、世の中、捨てたもんじゃない」「またいつかあんな景色を誰かといっしょに見られたらな」とすごく大事なものになることだってあるんです。

この歳まで生きて、そんなことが少しずつわかってきました。だから「人生は苦しいけれど、ムダではないな」「生きることの苦しさも含めて、豊かなことなんだな」と思えるようになってきたんです。

――ありがとうございました。

(聞き手・飯塚友理/編集・茂手木涼岳/撮影・矢部朱希子)

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